要介護者の旅行の実態に関する意識調査――第一生命経済研究所

第一生命経済研究所は、家族を介護している全国の男女800人を対象に、要介護者の旅行の実態を調査し、その結果を「要介護者の旅行を阻害する要因−介護者を対象とした意識調査から」として発表した。

バリアフリー旅行」「ユニバーサルツーリズム」という言葉が生まれるなど、介護が必要なっても旅行を楽しむ人は今後増えると予想されている。同調査は、介護を必要とする人が実際にどれくらい旅行を楽しんでいるのか、旅行をしたことがないのなら何が理由なのかを調べることで、要介護者が旅行しやすくなるための課題を明らかにすることを目的に行われた。

調査の結果から、旅行したことがある要介護者と介護者は28.5%、したことがないのは71.5%で、およそ3:7の比率であることがわかった。要介護者と旅行したことがない人は移動の手段や宿泊施設の設備などの「不安」が大きく、旅行の情報入手の方法や量においても旅行経験者との差が明らかになっている。
閉じこもりを防止し、充実した高齢期を過ごすためにも、要介護者の旅行についての研究・調査が進むことを期待したい。

【調査の概要】
調査の対象:現在家族を介護している全国の男女800人
調査の方法:インターネット調査
調査の時期:2011年11月

主な調査の結果は以下の通り。

要介護者と旅行した経験があるのは約3割

現在介護している家族と旅行したことがある(旅行経験者)のは、28.5%、したことがない(旅行非経験者)のは71.5%。旅行非経験者が旅行したことがない理由の上位は、「要介護者が旅行するのは無理だと思う」が40.6%、「要介護者が旅行したがらない」が31.5%。以下、「自分に時間の余裕がない」24.7% 「要介護者と旅行することに不安を感じる」23.3%「自分にお金の余裕がない」20.6%と続く。不安など介護者の心理的な要因と要介護者の心理的要因、さらに介護者の時間や経済的な要因が、要介護者の旅行をさまたげていることが明らかになった。

■旅行経験者と非経験者では、旅行に対する意欲に大きな差が

旅行経験者に対し、要介護者と自分自身の旅行前の意向をたずねたところ、「要介護者が旅行をしたがっていた」が72.4%、「自分が要介護者と旅行したかった」が70.6%と高い意向を持っていたことが明らかに。一方、旅行非経験者に旅行の意向をたずねたところ、「要介護者が旅行をしたがっている」が9.1%、「自分が要介護者と旅行したい」が23.4.6%で、旅行経験と比べて極めて低い結果となった。

■旅行非経験者は、旅行に対する不安が大きい

旅行非経験者に対し、今後旅行するとしてどのようなことが不安に思うかをたずねたところ、「要介護者が宿泊先で入浴すること」「目的地での移動が難しい」がともに84.4% 、 「目的地までの移動が難しい」が79.4%、「要介護者が移動中にトイレに入ることが難しい」が78.7%だった。
一方、旅行経験者に旅行をする前に感じていた不安について質問したところ、「要介護者が宿泊先で入浴すること」が53.3%で、入浴が最大の不安だったのは非経験者と同様だが、回答した人は30%も少ない。また、2番目に多かった「介護者の体調が悪くなる」も48.7%で、旅行経験者は、旅行前に感じた不安が非経験者に比べて小さいことがわかった。

■旅行時にもっとも困難だったのは、要介護者の入浴

旅行経験者に、要介護者と旅行した時に困難だったことを質問したところ、「要介護者が宿泊先で入浴すること」が44.7%で最多。次いで「自分が疲れる」43.0%、「要介護者が移動中にトイレに入ることが難しい」39.9%、「目的地での移動が難しい」38.6%で、不安の内容は旅行前に感じていたこととほぼ共通していた。また、旅行前に持っていた不安と旅行時の困難とを比べた場合「介護者の体調が悪くなる」では差が大きく、心配したほどには体調が悪くなっていないことが明らかになった。

■旅行前の情報の入手先は、介護している要介護

旅行経験者に、要介護者と旅行する前に、旅行できるどうかを検討するために調べたり、見聞きしたりした情報についてたずねたところ、「自分が介護している要介護者の話」が37.7%、「インターネットの情報」33.3%、「宿泊先の従業員の話」22.8%だった。また、要介護者と旅行できると判断した理由になった情報も、同じ順位だった。旅行した時に役に立ったのは、「インターネットの情報」「自分が介護している要介護者の話」「宿泊先の従業員の話」の順だった。
旅行非経験者に、「要介護者との旅行を検討したことがある」かどうかを質問したところ、「ある」は32.0%、「ない」は68.0だった。検討したことがある人が見聞きした・調べた情報は、「自分が介護している要介護者の話」が 38.8%、「インターネットの情報」が25.7%。
一方、要介護者との旅行をあきらめる理由になったのは「自分が介護している要介護者の話」で29.5%と最多。要介護者と旅行できる判断した理由、できないと判断した理由ともに「自分が介護している要介護者の話」だった。

■旅行非経験者は、情報へのアクセスや情報量が不足気味

旅行経験者に、要介護者と旅行する前に、旅行できるどうかを検討するために調べたり見聞きしたりした情報の内容についてたずねたところ、「交通機関の設備やサービス・アクセス」が53.1%、「宿泊先の風呂」が49.1%、「観光地の設備やサービス」が48.7%。多くの人は、移動や移動中のトイレ、宿泊先での入浴を不安・困難に感じていたが、そのための情報は事前にある程度得ていたことがわかった。

旅行非経験者が旅行できるどうかを検討するため、調べたり見聞きしたりした情報の内容についてたずねたところ、「交通機関の設備やサービス・アクセス」が45.4%、「観光地の設備やサービス」が42.1%と高く、以下「宿泊先のトイレ」「宿泊先の風呂」の順だった。もっと知りたい情報も「交通機関の設備やサービス・アクセス」が53.1%、「観光地の設備やサービス」が多かった。また、見聞きした・調べた情報の内容と比べて、「旅行中の介護・健康管理の方法」「旅行先の医療機関」について「もっと知りたい」と答えた割合は高かった。
 
旅行経験者と比べ、非経験者は、見聞きした・調べた情報の割合は低い。一方、もっと知りたいと答えた割合は、非経験者の方が高く、旅行非経験者の情報が不足しているとも考えられる。

◎第一生命経済研究所

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