認知症を初期で見極める3つのポイント――ノバルティスセミナー(2)

4月24日、ノバルティスファーマ株式会社が主催したメディアフォーラム「“記憶障害”だけではない、アルツハイマー型認知症」では、最後にパネルディスカッションが行われた。

パネラーとして登壇したのは、前半で講演を行った香川大学医学部精神神経医学 中村祐氏と、くどうちあき脳神経外科クリニック院長の工藤千秋氏、そして、工藤氏の患者家族の3名。


工藤千秋氏(くどうちあき脳神経外科クリニック院長)

「物忘れだけではなく、生活障害介護者のストレスになっている」という司会者の言葉を継いで発言した工藤氏は、「生活障害には、“自分の体を壊すもの”と“他人に迷惑をかけるもの”の2通りがある」とし、「生活障害が出ることで、本当に困る症状が早く見つかる」と述べた。

中村氏も、認知機能の低下などの症状を、「年のせい」と軽く考えることで、発見が遅れ、その間に悪化してしまうと、早期発見の必要性を強調。

それに対し、工藤氏は、初期で見極める3つのポイントを紹介した。
(1)患者に質問しても、すぐに同伴者のほうを向く
(2)財布が常にパンパン、あるいはいつも新しい財布を持っている
・お金の計算ができず、つねに1万円札で支払うため小銭が増える
・すぐに財布をなくし、買い換えている
(3)冷蔵庫のなかがごちゃごちゃしている
・腐ったものが入っている
・入れ方がランダム
・冷蔵庫に入れる必要のないもの、入れるべきでないものが入っている

また、治療を継続する意味についても言及。

工藤氏は、「認知症の治療は、一度中断するとガクッと悪くなる」と説明した上で、治療の中断を減らすためのポイントも紹介した。

一つは、認知症患者が必ずしも入院できるわけではないため、「在宅で看る、治療することをいかに保つか」。そのためには、(1)「薬の数を減らす」、(2)「介護者を疲れさせないようにする」ことが大事と指摘した。

もう一つのポイントは、入院中の認知症治療薬の服用について。たとえば、肺炎を起こして入院することになった場合、認知症治療薬の服用は止められてしまう。その結果、退院時には当然、認知症の症状が悪化する。しかし、パッチ剤であれば、添付を継続できるため、症状の悪化を最小限に抑えやすいという。

中村氏も、「『骨折などで入院すると認知症の症状が悪化する、在宅に戻れなくなることもある』ということは常識として知っていたが、データがなかった。今後は、アクシデントを乗り越えて、いかに在宅で治療を継続できるかが重要。『在宅へ向けた医療』という切り口がより大切になるだろう」と解説。

また、工藤氏は、「治療の原点は、手当て」と述べ、「薬だけ差し上げるのではなく、ご家族、介護者が1日1回でも貼る、触ることで、患者さんの心も温まるだろう」と、“手当て”の効果について伝えた。

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