国民生活センターは、東日本大震災により生じた原発事故以降、全国の消費生活相談窓口に寄せられた「放射能」に関する相談のうち、広告や勧誘に関する事例をまとめ、7月21日にホームページ上で公表した。
放射性物質への不安につけこむ広告や勧誘によるトラブルは、通信販売や訪問販売、マルチ取引で見られ、震災2か月後以降、東北や関東で増加しているという。同センターでは、今後トラブルが全国に拡大する可能性もあるとして、消費者に注意を呼びかけている。
主な相談事例は以下の通り。
■通信販売 の事例
【事例1】放射性物質を完璧に除去するとうたう浄水器
インターネットで「世界の軍隊が放射能汚染地域で使用」などとうたう米国製浄水器を見つけ、その浄水器を扱う日本の代理店のホームページで注文。しかし、改めて広告を見ると不審に思えてきたため、代金を支払わずキャンセルを申し出たが、商品が届いてしまった。返送しようとしても代理店の事務所はすでになくなっているようだ。どうしたらよいか。(2011年6月 北海道 30代 女性)
【事例2】一方的にファックスで届いた放射線測定器の広告
自宅に、突然「震災対象地域限定価格(約5万円)で小型放射線測定器を販売します」という内容の広告がFAXで届いた。見知らぬ業者なので、一方的にFAXが届いたのは不審である。(2011年4月 北海道 70歳 男性)
【事例3】商品も送らず返金もしない通信販売業者
インターネットで、放射線測定器の専門店というサイトを見つけて注文したところ、業者から前払いで約7万円を振り込むようにというメールが届き、代金を振り込んだ。しかし、1か月たっても商品が届かず、不審に思っていたところ、「商品に重大な欠陥が見つかったので、解約させてほしい。返金するので振込先を教えてほしい」とのメールが届き、振込先を伝えたが、約1か月たっても返金されない。(2011年6月 茨城県 40代 男性)
【事例4】フィッシング詐欺が疑われるネットショップ
原発事故発生後、インターネットでミネラルウォーターを安く販売しているショップを見つけて住所、氏名、電話番号、クレジットカード情報を入力して注文したが、受注メールが届かなかった。不審に思い、ホームページを確認したところ、すでになくなっていた。フィッシング詐欺かもしれないと思い、カード会社に連絡すると、すぐに再発行の手続きをするように言われた。個人情報やカード情報を入力してしまい、不安だ。(2011年3月 埼玉県 20代 女性)
■訪問販売 の事例
【事例5】放射性物質を吸着除去するという温浴器
2年前に展示販売会で浄水器を購入したが、その販売業者が震災後に来訪し、風呂の中で使う放射性物質を吸着するという温浴器を勧められた。東北地方に息子が住んでいるので、1台約50万円の温浴器を2台購入することにし、内金約20万円を支払った。息子に電話で温浴器のことを伝えると、そんな話は聞いたことがない」と言われた。だまされたと思うので解約したい。(2011年4月 静岡県 80代 女性)
【事例6】市役所から来たという人から説明された放射性物質の侵入防止用換気扇フィルター
留守中、作業着を着た男性2人が自宅を訪れ、対応した妻に「市役所が放射能検査をしている。換気扇にフィルターをつけないと放射性物質が入ってくる」などと言い、測定を始めた。帰宅した自分が不審に思い、「市役所に確認する」と言ったところ、急いで帰ってしまった。自分が帰宅しなければ、換気扇フィルターを勧誘されていたと思う。(2011年3月 茨城県 30代 男性)
■マルチ取引
【事例7】放射能汚染を防ぐと説明された栄養ゼリー
知人から「放射能汚染を防ぐことができる栄養ゼリーがある」と購入を勧められた。また、他の人を紹介すれば紹介料がもらえると言われた。まだ日本で販売していない商品だが、放射性物質に対して不安があったので海外の業者のサイトから申し込んだ。3週間後に商品が届き、開封して飲んでみたが効果があるとは思えない。悪質な勧誘だと思う。(2011年4月 東京都 年代不明 女性)
■消費者へのアドバイス
1)放射性物質の除去などをうたう広告や勧誘をうのみにしない
「体内被ばくを防ぐ」「放射性物質の除去が可能」などとうたっていても、根拠となるデータが示されていない場合や、データが示されていても根拠とはならない場合が多いので、注意が必要。そのような広告を見たり、勧誘された場合は、根拠となるデータを確認し、データを正確に判断できる専門機関へ問い合せるなどして、冷静に検討すること。
2)通信販売業者と連絡が取れなくなることも。前払いは慎重に
通信販売で商品を購入する前に、販売業者の所在地(住所)や担当者名、電話番号の記載を確認し、不備がある業者からは購入しない。また、通信販売はクーリング・オフができず、販売業者が記載する返品ルールに従うことになるので、事前に確認すること。
3)クレジットカード情報の扱いは慎重に
金融情報など個人情報を入力するページでは、ブラウザにSSL通信を示す「鍵のマーク」がロックされた状態で表示されているかを確認。「鍵のマーク」をクリックして企業の正規ホームページか確認することを習慣づける。クレジットカード情報を入力した後に不審に感じた場合は、すぐにカード会社に連絡すること。
4)「放射線量を測定する」などと言われても、簡単に信用しない
自治体の職員が突然訪問して有料で放射線量を測定したり、商品等を販売することはないので十分に確認する。また、商品や契約の内容を理解しないうちは契約せず、慎重に検討すること。
5)その他、不審に思った場合や被害にあったときは、各地の消費生活センターや警察などに相談する。