介護保険料などを還付するなどとかたり、逆にATMを通じて現金を振り込ませる「還付金詐欺」が急増している。警察庁のデータでは、今年10月までの認知件数は、昨年の倍以上に達している。コロナ禍で家族間や住人間の交流が減ったことが背景にあるとみられる。
警察庁が公表した今年1月から10月までの「特殊詐欺の認知・検挙状況等」によると、還付金詐欺の認知件数は3385件。被害総額は38億3327万7000円に達した。昨年の同じ時期(認知件数は1399件、19億2004万8000円)と比較すると件数では倍以上に、被害総額も倍近くにまで急増している。
実際、介護保険料の還付金が受け取れると嘘をつき、高齢者ら103人から現金1億円超をだまし取った容疑者が大阪で逮捕されているほか、全国各地で同様の詐欺が発生している。
こうした状況を踏まえ、全国各地の自治体は、高齢者が犯罪に巻き込まれないよう、次のことを呼びかけている。
・介護保険料の還付金がある場合、対象者には郵送で通知する
・還付金を受け取るために、ATMの操作を依頼することは、一切ない
・「銀行で還付金が受け取れる」といった類の電話は「還付金詐欺」の可能性が極めて高い
■コロナ禍が影響?「ケアマネは利用者に注意喚起を」
介護保険料などに関する還付金詐欺が増加している背景について、淑徳大の結城康博教授は「還付金の制度自体が知れ渡ったことに加え、コロナ禍で家族に連絡したり、近所に住む人と会ったりする機会が減ったことが影響しているのではないか」と指摘。年末にはこうした詐欺が増える傾向があることから「ケアマネジャーは怪しい電話を受けた場合、すぐに連絡するよう自分の担当する利用者に注意喚起した方がよいのではないか」としている。