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【解説】賃上げに取り残された？居宅のケアマネ、今後の展望は

岸田政権が来月2月から緊急実施する「介護の賃上げ」。残念ながら、居宅介護支援事業所のケアマネジャーは、その対象からは外れる見通しとなった。ただ、来年10月のタイミングで、居宅介護支援のケアマネの処遇改善が実現する可能性も残されている。来年2月から緊急措置の内容を改めて読み解きつつ、居宅のケアマネの賃上げの行方を探る。

■来年2月からの賃上げ、施設ケアマネは恩恵を受ける可能性
先月、閣議決定された2021年度の厚生労働省補正予算案では、来年2月からの介護の賃上げについて、次のような方針が示された。

「保育士等・幼稚園教諭、介護・障害福祉職員を対象に、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として、収入を３％程度（月額 9,000 円）引き上げるための措置を、来年２月から前倒しで実施する」

来年2月からの賃上げの対象は介護職員であることが明記されている。

補正予算案では、賃上げで得られた収入は、事業所内で柔軟に運用してもよい方針も示された。この点について厚生労働省は「あくまで介護職員が所属している事業所内で認められること。介護職員等特定処遇改善加算（特定処遇改善加算）と同じ考え方です」（老人保健課）としている。

つまり、介護職員がいない居宅介護支援事業所のケアマネは、来年2月からの介護の賃上げの恩恵に、あずかれないことになる。一方、施設のケアマネは、事業者の裁量次第では賃上げの対象になりうる。

■まだ何も決まっていない、来年10月以降の賃上げの絵姿
厚労省の補正予算案では、月額9000円ほどの賃上げを実施するのは来年2月から9月までとなっている。来年10月以降の処遇改善の仕組みについては、今後、検討される見通しだ。

現段階で、来年10月以降の処遇改善の仕組みや対象がどうなるかについては、まだ何も決まっていない。見通しがあるとすれば、来年2月から9月までの臨時の賃上げは全額が税金でまかなわれるが、10月以降は、介護報酬で賃上げを維持する可能性が高いことくらいだ。

ただ、気になることもある。先月、閣議決定された2021年度の厚生労働省補正予算案に「…新型コロナウイルス感染症への対応と少子高齢化への対応が重なる最前線において働く方々の収入の引上げを含め、全ての職員を対象に公的価格の在り方を抜本的に見直す」と、改めて明記された点だ。

処遇改善に関する制度が根本的に見直されれば、来年10月以降、居宅介護支援のケアマネも処遇改善の対象になる可能性も出てくる。

■居宅のケアマネの賃上げは介護業界の総意
来年10月以降の施策も見据え、日本介護支援専門員協会は11月18日と11月25日、居宅介護支援のケアマネも処遇改善の対象とすることを求めた要望書を、国や「公的価格評価検討委員会」に提出した。さらに、全国介護事業者連盟や全国老人福祉施設協議会などの介護関連の団体からも居宅介護支援のケアマネを処遇改善の対象にするよう、要望が上がっている。

もはや、ケアマネの賃上げを求める声は、介護業界の総意といってよい。

■2つの処遇改善加算の見直しも？注目の中間整理は年内に
来年10月以降の施策の大枠を検討するのは、新たに設けられた「公的価格評価検討委員会」だ。そして大枠が固まったのち、来年の社会保障審議会介護給付費分科会で、具体的な制度設計が議論されることになる。

その「公的価格評価検討委員会」は、既に介護職員処遇改善加算と特定処遇改善加算の見直しを検討する方針を示している。

介護職員処遇改善加算と特定処遇改善加算は、いずれも居宅介護支援のケアマネにとっては縁のない施策だ。それだけに、この2つの加算の枠組みに見直しを迫るような方針が提示されれば、ケアマネの処遇改善に向けた機運が高まるかもしれない。

ただ、その一方で、来年2月から9月までの賃上げを既存の特定処遇改善加算の枠組みに留め、居宅のケアマネを蚊帳の外とする方針を容認したのも「公的価格評価検討委員会」だ。

ケアマネの賃上げにつながるような思い切った公的価格の在り方が示されるのか、それとも、ケアマネの処遇改善は取り残されたままとなるのか―。注目の「公的価格評価検討委員会」の中間整理は、年内に公表される見通しだ。