厚生労働省は、介護職員等特定処遇改善加算(特定処遇改善加算)の、事業所内での配分ルールを変更する案を社会保障審議会介護給付費分科会に示した。伸び悩む算定率を高めることが目的だが、同分科会では、反対意見が相次いだ。
特定処遇改善加算は、勤続年数が10年を超える介護福祉士など、「経験・技能のある介護職員」の定着の支援を主な目的としている。加算で得られた報酬はケアマネジャーや看護師など、介護職員以外に配分することもできるが、その際には、次のルールに従う必要がある。
(1)「経験・技能のある介護職員」の平均の賃金改善額は、「その他の介護職員」の2倍以上とする
(2)「その他の職種」の平均の賃金改善額は、「その他の介護職員」の2分の1を上回らない
しかし、この配分ルールは、職種間や介護職員間の賃金バランスを崩す可能性もある。実際、その点を懸念する事業所も多く、特定処遇改善加算の算定率は約65%にとどまっている。
この問題点を解決するため、厚労省は配分ルールを次のように変更する案を同分科会に示した。
1.「経験・技能のある介護職員」の平均の賃金改善額は、「その他の介護職員」の「2倍以上とすること」から「より高くすること」とする
2.「その他の職種」の平均の賃金改善額は、「その他の介護職員」の「2分の1を上回らないこと」から「より低くすること」とする
この配分ルールが導入されれば、施設などで働くケアマネであれば、ベテランの介護福祉士と、あまり遜色ないレベルの「賃上げ」が実現される可能性も生じる。
■委員の間からは反対意見が続出
厚労省の案に対し、藤野裕子委員(日本介護福祉士会常任理事)や河本滋史委員(健康保険組合連合会常務理事)は、経験・技能のある介護職員への処遇改善を重視する立場から反対する姿勢を明示。安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)らも「(特定処遇改善加算が)スタートしてまだ2年目。より柔軟な配分が可能な仕組みへと見直すことは拙速な感がある」と述べ、慎重な姿勢を示した。