関係団体へのヒアリングが行われた3日の社会保障審議会介護給付費分科会では、介護職員処遇改善加算と介護職員等特定処遇改善加算について、対象や配分方法の見直しなどを求める声が上がった。全国社会福祉法人経営者協議会の調査では、介護職員処遇改善加算を算定する社会福祉法人の7割超が、ケアマネジャーや看護職員らに持ち出しで賃上げを行っており、出席した同協議会の代表者は、法人側の裁量の拡大などを要望した。
同協議会は昨年8月~今年2月、特別養護老人ホームを経営する社会福祉法人867法人を対象に調査を実施。その結果、介護職員処遇改善加算を算定する860法人のうち、74%に当たる637法人が、職員間の賃金のバランスを取るため、法人・事業所の負担で賃上げを行っていることが分かった。
賃上げの対象を複数回答で尋ねると、「算定している事業所の職員」が465法人に上り、「算定していない事業所の職員」が359法人と続いた。さらに、持ち出しで賃上げを行っている主な職種を3つまで選んでもらったところ、トップは看護職員(421法人)、次いで生活相談員(390法人)、ケアマネ(262法人)などと続いた。
同協議会の高齢者福祉事業経営委員会の柿本貴之委員長は、「職場内での不公平感を払拭するために、看護職員やケアマネなどを中心に、独自で賃金の改善を実施している。加えて、多くの法人が事務手続きを大変煩雑だと感じており、法人本部や中小の法人の事務のマンパワーに影響が出ている。(加算の)対象、配分方法等の見直しと法人裁量の拡大、そして事務負担軽減のための施策をスピーディーに進めることを要望する」と述べた。
■加算の一部を人材対策費に―事業者団体
介護職員処遇改善加算と介護職員等特定処遇改善加算はいずれも、居宅介護支援事業所などは算定の対象外となっているが、職員間の賃金のバランスを取るため、持ち出しで処遇改善を行っている実態が改めて浮き彫りとなった。
全国ホームヘルパー協会の青木文江会長は、「小さな事業所は、チームワークで事業所を支えているが、ほとんどの事業所はケアマネも抱えている。同じ事業所の中で、訪問介護員だけ(処遇改善)というわけにはいかなくなって、そこのバランスを取るために、事業所が何らかの方法で対策を練っている」と明かした。
この日の分科会では、全国介護事業者連盟からも、加算を算定するための提出書類の簡素化や対象職種の拡大、加算の一部を人材対策費に活用できる仕組みの導入などを求める声が上がった。
同連盟の斉藤正行理事長は、「職員の給与は、介護事業者の人事制度や給与規定といった経営の根幹に関わるところでもあるので、ある程度、事業者の裁量に委ねていただきたい面もあると感じている。職員の給与以外にも、紹介会社への手数料も含めた採用費や労務管理費、研修費などがかなり高騰している状況もある。そうした費用への配慮もお願いしたい」と述べた。