新型コロナウイルスの感染が拡大する中、マスクや消毒液といった衛生用品の不足も深刻化している。その影響が高齢者の生活を支える介護事業所にまで及び、マスクを確保できていない事業所が出始めていることが、介護職員らの労働組合である「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン」(NCCU)の調査で明らかになった。調査によると、居宅介護支援事業所を含めた介護事業所全体の2割近くが、既に手持ちのマスクがない。特に在宅の高齢者を直接支える訪問介護では、約3割の事業所がマスクを確保できていないという。
NCCUでは2月28日から、組合員が働く4043カ所の介護事業所にアンケート調査を実施。1日14時までに1117カ所から回答を得た。このうち、訪問介護事業所は334カ所、居宅介護支援事業所は46カ所だった。
■居宅介護支援では4割近くが「ない」
マスクの在庫を確認したところ、「既にない」と答えた事業所は18.8%だった。訪問介護事業所に限れば、その割合は27.8%となった。マスクの在庫が14日以内に切れると答えた事業所は全体では52.5%、訪問介護事業所では66.5%だった=グラフ=。居宅介護支援事業所でマスクが既にないのは37.0%、マスクの在庫が14日以内に切れると答えた事業所は63.0%だった。
厚生労働省は2月24日、37.5度以上の発熱がある高齢者については、デイサービスやショートステイの各事業所が利用を断るよう要請した。そして、デイサービスなどを利用できなかった高齢者については、担当するケアマネジャーが、代わりのサービスの提供を検討するとしている。この場合、代わりとなるサービスとして最も期待されるのが訪問介護だ。その訪問介護事業所で十分な衛生用品が用意できていないという結果は、感染リスクの高い現場を担うヘルパーにとっては深刻な結果といえる。
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■「ヘルパーを守れない!」
事実、NCCUの調査では、次のような声が寄せられた。
「(新型コロナウイルスへの感染が)疑わしい方のところへ入るためのヘルパーさんの防護服のようなものも手に入らない。ヘルパーを守れない」
「ショートステイやデイサービスの利用を断られた利用者様のために訪問介護サービスを提供しろと言われても、ヘルパーさんがいません」
この調査結果についてNCCUでは「介護現場では、これまで日常的に行ってきた感染症対策さえ困難な事態となっているといえる」と分析。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、医療・介護・福祉などの現場に優先的に必要な衛生用品が行き届くよう、政府がその流通先についても管理すべきとしている。