もういくつ寝ると

いよいよ今年も余すところわずかとなり、なにかと気ぜわしい毎日をお過ごしのことと存じます。
この時期になりますと、いつも思い出す出来事があります。

ホームヘルパーとして介護の仕事に就いていた頃の事。私は或るご夫婦おふたり暮らしのお宅に、家事のお手伝いの為、ご訪問をさせていただいていました。

そのご夫婦、伸次郎さん(85歳・仮名)と敦子さん(80歳・仮名)は、毎日ヘルパー訪問をご利用になりながら、ご自宅で生活を送られていました。普段はのんびりとお過ごしになっているおふたりも歳の瀬になりますと、それぞれが新年の準備の為に少々お忙しくなります。

伸次郎さんは年賀状のご準備。長らく学校の先生をおつとめになっていた伸次郎さんは、教え子の皆様から毎年たくさんの年賀状が届きます。脳梗塞後遺症の為、利き手がいくらか不自由ながらも、12月の初め頃から「1日に5枚ずつ」と決め、「これもリハビリだよ。ゆがんでるけどアジのある字だろう」と、丁寧に年賀状をしたためられていました。

かたや、敦子さんは歳末になりますと、おせち料理の準備が始まります。敦子さんは腰椎の骨折後、終日コルセットをつけて生活をされていらっしゃり、痛みもある為に立ち仕事がままなりません。それでもお料理が大好きでお得意。ヘルパーがお手伝いをしながら、お勝手仕事に精を出していらっしゃいました。敦子さんには台所の椅子に腰をかけていただき、ヘルパーは切り方や味付けの仕方を教わりながら調理のお手伝いをさせていただきます。

大晦日の数日前から、田作りや黒豆煮、昆布巻など日持ちのするお品を順に作っていきます。敦子さんに教えていただいたおせち料理の中でも印象深いのは「柿の紅白なます」と「さつま芋のきんとん」です。柿の紅白なますはご主人様の故郷、奈良の郷土料理。千切りにした大根と人参を甘酢に漬け込む際、こちらも千切りにして、包丁の背で叩いた干し柿を一緒に混ぜて漬け込みます。干し柿の甘みがほんのりと美味しいひと品です。さつま芋のきんとんはご子息様の大好物だったとのこと。栗の甘露煮と茹でて潰したさつま芋に、バターとお砂糖と牛乳少々を混ぜて柔らかくなるまで練り、ラップに包んで茶巾絞りにして出来上がり。ほっくり洋風きんとんです。

このところは一流シェフや高級料亭の豪勢なおせちが様々売られていますが、敦子さんの特製おせち料理は、市販のものとはひと味もふた味も違う真心のこもったご馳走でした。 

ご夫婦のお正月の御支度。手書きの年賀状に御手製のおせち料理。そうして28日には「縁起物だからね、末広がりの8のつく日に飾るんだよ」と伸次郎さんがお鏡餅と松飾りをご用意されていました。「今年もよく生きた。もういくつ寝るとお正月だね」とにっこり。おふたりと過ごした思い出は今も深く心に残っています。

寒さもひとしお身に染みる頃となりました。皆様お風邪など召しませんようどうぞお体には気をつけて、よいお年をお迎えくださいますようお祈り申し上げます。

おせち
Y ・K
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