厚生労働省は12日の社会保障審議会介護給付費分科会で、居宅介護支援事業所の管理者を主任ケアマネジャーに限定する要件の全面適用を6年延長することなどを盛り込んだ審議報告案を示し、大筋で了承された。2021年4月以降に新たに管理者になる場合は、主任ケアマネの資格が必要だが、管理者の突然の退職など、やむを得ない事情がある事業所への救済措置も併せて導入される。同省では、年明けの諮問・答申を経て、早ければ年度内に省令を改正する見通し。
主任ケアマネの管理者要件をめぐっては、21年3月末までの経過措置が設けられているが、管理者が主任ケアマネではない事業所が依然として4割程度あることなどから、厚労省は、同月末時点で要件を満たしていない事業所について、27年3月末まで経過措置を延長する方針=図=。
また、中山間地域や離島など、主任ケアマネの確保が困難な地域に配慮し、「特別地域居宅介護支援加算」や中山間地域などにおける「小規模事業所加算」を取得できる事業所については、管理者要件の適用から外す。
一方、21年4月以降新たに管理者となる場合は主任ケアマネの資格が必要だが、管理者の突然の退職など、事業所に不測の事態が起こった際の救済措置も設けられる。
具体的には、管理者要件が満たせなくなった事業所が、その理由と改善に向けた計画を文書で保険者に届け出れば、要件の適用を1年間猶予する。また、地域に他の事業所がないなど、利用者保護の観点から、保険者がさらなる猶予が必要だと判断した場合は、期間を延長できるようにする。
■無期限の延長に懸念、指導求める声も
厚労省案に対して、委員から特に反対意見は出なかったが、保険者の判断で猶予期間を延長できることについて懸念する声も上がった。
審議報告案を大筋了承した分科会
伊藤彰久委員(連合・総合政策推進局生活福祉局長)は、「保険者が漫然と無期限で認めることはないと考えるが、そういったことがないよう、国にも指導をしていただきたい」と要望。また、江澤和彦委員(日本医師会常任理事)も、「地域によって公平性が担保されないとか、判断が大きく異なるという事態は避けるべきだと思っている」と述べ、国が対策を講じるよう求めた。
さらに、岡島さおり委員(日本看護協会常任理事)は「経過措置期間をただただ延長するのではなく、その期間内に皆さんが、(主任ケアマネの研修を)受講できるような対策を自治体が取るよう、もう少し(審議報告に)明記していただきたい」と指摘した。
■中山間地域の主マネが引き抜かれる?
中山間地域などが要件の適用外となることについて岡島委員は、「中山間地域や離島においても、主任ケアマネによる質の担保は必要だと考えている。事業所が存在して、そこに管理者の方がいらっしゃるのであれば、速やかに研修が受講できるような環境整備を進めていく必要がある」と主張した。
また、伊藤委員は「特定の地域で主任ケアマネである必要がないとなると、現に主任ケアマネの研修を受けている人が、『あなたなんか、その地域に要らないよね』と引き抜かれ、不足している地域がリクルートされるという指摘を聞いている。ぜひ、どの地域でも研修を受けられる体制づくりをお願いしたい」と述べた。
保険者によって猶予期間の考え方が異なることがないよう、厚労省では、省令改正について通達する際、自治体に周知するとしている。