2020年度の予算編成などに向け、政府は5日に経済財政諮問会議(議長=安倍晋三首相)を開き、社会保障制度改革について議論した。経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)ら4人の民間議員は、居宅介護支援事業所と他のサービス事業所との電子データでのやり取りを促すため、国が定める「ケアプラン標準仕様」の普及を着実に進めるよう重ねて要望した。
諮問会議で発言する安倍首相(首相官邸のホームページ)
「ケアプラン標準仕様」は、事業所間でケアプランの電子データをやり取りする際の項目などを定めた共通フォーマットで、厚生労働省が昨年作成した。
事業所間で異なるメーカーの介護ソフトを使用していると、互換性の違いで電子データの交換がうまくできず、ケアマネジャーは、ケアプランの内容をファクスなどでやり取りした上で、事業所のパソコンなどに再入力している実態がある。
「ケアプラン標準仕様」の普及が進めば、居宅介護支援事業所と他のサービス事業所との間で、ケアプラン(予定・給付実績)の電子データによる交換が可能となり、ケアマネの負担軽減につながることが期待される=図=。
厚労省は今年度から、標準仕様に準拠した介護ソフトの購入費用などを一部補助しているが、民間議員は「進ちょく状況が明らかでない」と指摘。その上で「今後、現場での実装において、標準仕様に基づくシステムの導入・事業所間の介護ソフトの互換性の確保が着実に進むよう、KPIを掲げて着実に推進すべき」として、政府が年末に改定する改革工程表で具体的な目標を掲げるよう求めた。
■介護事業者とITベンチャーとの連携促進を
民間議員はまた、厚労省がまとめた介護分野の文書に関する事務負担軽減策について、介護予防などで成果を挙げた自治体の補助金を手厚くする「保険者インセンティブ」などを活用し、自治体での取り組みを着実に進めることも提言した。
さらに、社会福祉法人などの介護事業者とIT関連のベンチャー企業との連携などを促すとともに、介護ロボットなどの先端技術の横展開を進めるため、科学的なデータを蓄積し、介護報酬に反映することも併せて要望した。