介護の現場で中心的な役割を果たすことが期待される介護福祉士。国はその処遇の改善に力を注ぐと同時に、質の向上に向けた取り組みも進めている。中でも重要な施策と位置付けられるのが国家試験での合格を必須とすること。「資格取得方法の一元化」と呼ばれる取り組みだ。2022年度には実現する予定だが、ここに来て関連する業界から「待った」の声が上がり始めた。
介護福祉士の資格を取得するための主なプロセスには、一定の実務経験がある人が研修を受けた上で、国家試験を受験する「実務者ルート」と、福祉系大学や専門学校などの養成施設を卒業する「養成校ルート」がある。
■22年度以降、国試合格が必須となる予定だが…
国は、介護福祉士の質をさらに向上させるため、「養成校ルート」の卒業生にも国家試験の合格を必須とすることを決定。17年度から国家試験での合格を求めている。ただし、5年間は猶予期間と位置付けられており、国家試験に合格しなくても資格を得る道も用意されている。国家試験の合格が必須となるのは22年度以降だ。
■減り続ける養成校の入学者
しかし、ここに来て国家試験合格の必須化を延期しようとする動きが強まっている。厚生労働省の検討会や自民党の委員会で、介護施設を運営する団体などから、「養成校ルート」の卒業生のための猶予期間を延長すべきとの意見が出始めているのだ。
背景にあるのは養成校の入学者の減少だ。同省のデータによれば、養成校で学ぶ人は15年には全国で9000人近くいたが、今年は7000人弱まで減少した=グラフ=。ここで合格が必須になってしまえば、「養成校ルート」から介護福祉士を目指す人がさらに減り、介護福祉士の確保はより困難になる恐れがある。加えて養成校に外国人材が増えている点も影を落としている。日本語の試験は、多くの外国人材にとって難し過ぎるのだ。実際、「養成校ルート」の卒業する見込みの日本人の場合、国家試験の合格率は90.9%だったが、外国人は27.4%だった。(※)
ただし、国家試験合格を必須とする改正は、介護福祉士の質向上を目的とした施策だ。それだけに日本介護福祉士会は、その必須化を少しでも早く実現することを求め続けている。
介護福祉士の「資格取得方法の一元化」は予定通り行われるのか、あるいは延期されるのか―。その判断は年末までに社会保障審議会福祉部会で示される見通しだ。
※いずれも今年1月に実施された国家試験の合格率