高齢者の自立支援につながる取り組みを財政面から自治体に促す仕組み(財政インセン)についての議論が27日、社会保障審議会介護保険部会で始まった。既に実施されている財政インセンでは、ケアプラン点検の頻度などケアマネジャーの活動にも強く影響する指標が盛り込まれている。この日の議論では、要介護状態の改善・維持など、直接成果を示す指標をより重視すべきとする意見が出た一方、サービスの提供や要介護認定への悪影響を懸念し、慎重な検討を求める声も上がった。
国は財政インセンの具体的な施策として、2018年度に「保険者機能強化推進交付金」(交付金)を導入した。指標の達成状況などに基づいて交付金の金額が決まる仕組みで、都道府県の場合は13項目、市区町村の場合は41項目の指標が定められている。なお、19年度の場合、最も多くの交付金を受け取った都道府県は熊本県(3113万3000円)。最も少なかったのは千葉県(439万6000円)だった=グラフ=。
指標は各自治体が受け取る交付金に直接影響してくる。それだけに指標に盛り込まれた活動やその達成状況などについては、市区町村や都道府県も注目し、事業者への働き掛けを強めてくる可能性がある。
なお、ケアマネの活動に直接かかわる指標としては、「生活援助の訪問回数の多いケアプラン(生活援助ケアプラン)の地域ケア会議などでの検証について、実施体制を確保しているか」や「ケアプラン点検をどの程度実施しているか」などが盛り込まれている。
■「成果重視」、委員の間でも意見が分かれる
27日の介護保険部会では、厚生労働省が交付金をはじめとした財政インセンについて、主に次の論点を示した。
(1)交付金で評価すべきことや、指標の見直し
(2)自治体間の保険料の格差を緩和するために設けられている「調整交付金」を、財政インセンに活用すべきかどうか
このうち(1)は、要介護状態の維持・改善などの成果をより重点的に評価することなどを求めた政府の「成長戦略フォローアップ」の内容と併せて提示されている。成果重視の見直しを強く意識した論点といえるだろう。
(介護保険部会、27日)
委員からは、「(要介護状態の改善・維持などの指標を)もっと重点的に評価すべき」(安藤伸樹委員・全国健康保険協会理事長)とする意見が出た一方、「過剰な給付抑制につながる可能性がある」(齋藤訓子委員・日本看護協会副会長)、「サービスを受けられなくなる人が出てくるのではないか、という懸念もある」(石本淳也委員・日本介護福祉士会会長)など、慎重な検討が必要とする声も上がった。また、要介護状態の維持・改善で高い成果を上げた自治体の活動内容を全国に広げていくべきとする意見が複数の委員から出た。
そのほか、交付金の指標全体については、判断基準をより明確にすべきとする意見や、達成率が高すぎる指標は変更すべきとする意見が出た。
調整交付金については、多くの委員が財政インセンに転用すべきではないとした。