政府は20日、「全世代型社会保障検討会議」(議長=安倍晋三首相)の初会合を開いた。同会議では、来年6月ごろに報告書をまとめる見通しで、その内容は、経済財政運営の指針となる「骨太方針2020」に反映される。安倍首相はこの日、総力を挙げて具体策を検討するよう関係閣僚に指示した。
安倍首相は今月11日、第4次再改造内閣を発足させた直後の記者会見で、「少子高齢化と同時にライフスタイルが多様となる中で、誰もが安心できる社会保障制度へ改革を進めていく」と述べ、社会保障全般をテーマとした新たな検討の場を設ける方針を表明。政権がスタートして7年目を迎える中、この会議を社会保障改革の総仕上げの場として位置付けている。
初会合で発言する安倍首相(首相官邸のホームページ)
全世代型社会保障改革担当大臣として会議を取り仕切るのが、第2次安倍内閣で社会保障と税一体改革担当副大臣を務めた西村康稔氏だ。
有識者委員には、社会保障審議会の医療保険部会と介護保険部会で部会長を務める遠藤久夫氏(国立社会保障・人口問題研究所長)をはじめ、財政制度等審議会財政制度分科会の会長代理で、社会保障制度改革推進会議議長代理の増田寛也氏(東大公共政策大学院客員教授)、同推進会議議長の清家篤氏(日本私立学校振興・共済事業団理事長)、経済財政諮問会議民間議員の新浪剛史氏(サントリーホールディングス社長)ら9人が名を連ねる。
介護業界からは、増田氏と同じく財政制度分科会で委員を務める櫻田謙悟氏(SOMPOホールディングス社長)が参加している。
メンバーの多くが、厚生労働省や財務省の審議会や政府会議の委員であることを考えると、これまで検討されてこなかった政策が浮上する可能性は低い。西村担当相は20日の記者会見で、「関係審議会の代表者が委員に入っている。これまでの議論を踏まえる形で発言されることになる」と述べている。
焦点となるのは、給付と負担の見直しだ。初会合では具体的な意見は出なかったが、今後、いわゆる“ケアプラン有料化”や介護保険の負担割合の見直しなども議題に上りそうだ。自民・公明両党でも今週から、社会保障改革をめぐる議論が始まるため、同会議では、与党と歩調を合わせながら検討を進めるとしている。
社保審の介護保険部会では現在、21年度から始まる次の制度改正に向けた検討が進んでいる。同会議では、年内に中間取りまとめを行う方針で、政府は関連法案の一部について、年明けの通常国会への提出を視野に入れている。同部会長の遠藤氏が同会議に参加していることを考えると、“ケアプラン有料化”の行く末は、同会議の議論に左右されることになりそうだ。