制度改正などについて議論する社会保障審議会介護保険部会(部会長=遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所長)は26日、介護人材の確保を真正面から論じた。賃上げに職場環境の整備、ロボットやICTの活用も後押し…。この日、厚生労働省は、さまざまな解決策を論点として提示した。これに対し、委員からは異論は出なかったものの、「離職率が低い事業所を調査し、その理由を探るべき」「介護職員として働いていない有資格者を、もっと積極活用する施策が必要」など、より即効性のある対応を求める声が相次いだ。
介護関係職種の有効求人倍率は2018年度に3.95倍と、全職業(1.46倍)を大きく上回っている。さらに、25年度までに、毎年6万人程度の介護人材を確保する必要もあるなど、人材不足は今後、深刻さを増すことが予想される。
その一方、介護職員の離職率は17年度の段階で16.2%。全産業平均(14.9%)を少し上回っている上、離職率が30%を超えるような事業所も全体の約2割存在する。
(社会保障審議会介護保険部会、26日)
こうした状況を踏まえ厚労省は、介護人材の確保に向けた論点として、次の項目を示した。
・介護職員の処遇改善
・雇用管理面の改善
・ICTの活用などによる業務改善
・教育現場などへの働きかけ
さらに厚労省は、専門性の高い業務とそうでない業務を仕分けした上で、専門性があまり必要とされない業務は、元気な高齢者やロボットなどに担ってもらうパイロット事業に取り組む方針も改めて示した。現場の生産性を高めることを目指した取り組みで、事業で得られたノウハウは全国の事業所に周知する予定という。
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厚労省が示した論点に対し、反対意見は出なかった。特に元気な高齢者を積極的に活用する方針については、多くの委員が前向きに評価した。
■離職率が低い事業所、「その背景の分析を」
厚労省が示した論点以外では、「離職率が低い事業所にヒアリングし、なぜ職員が定着しているのかを分析するべき」という意見が複数の委員から上がった。厚労省が示したデータによると、離職率が30%を超えるような事業所が2割程度ある一方、離職率を10%未満に抑えている事業所も、約4割ある=グラフ=。
また比較的規模が小さな事業所において、離職率が高い傾向が見られる点に着目した一部の委員からは、人材確保の観点からも、事業所の大規模化を推し進めるべきではないかとする意見が出た。
■潜在化した人材の積極活用求める声も
さらに、介護福祉士などの資格は持っていても、それを生かした仕事をしていない「潜在化した人材」を、活用するための取り組みにもっと力を注ぐべきとする意見も相次いだ。