令和初の国政選挙となった第25回参院選は、消費増税の実施を主張してきた自民、公明両党が改選議席(124議席)の過半数を獲得する結果となった。これにより、消費税率の引き上げに伴う臨時の介護報酬改定も10月に行われる運びとなり、新たな処遇改善加算の創設も確定した。厚生労働省の審議会では今後、2021年春の制度改正に向けた議論が本格化する。介護や医療をめぐる年末までの主な動きをまとめた。
■決着は年末、“ケアプラン有料化”も?
ケアマネジャーの読者が最も注目するのは、やはり制度改正の行方だろう。介護保険法の改正案をめぐる議論は、主に社会保障審議会(厚労大臣の諮問機関)の介護保険部会で行われるが、実は、検討のための時間はそれほど多くはない。
第8期介護保険事業計画が始まる21年4月に間に合わせるためには、来年の通常国会に改正案を提出する必要がある。厚労省は、年末までに介護保険部会の議論を取りまとめるスケジュールを描いており、残り時間は既に半年を切っている。
タイムリミットが間近に迫る一方で、検討課題は多岐にわたる。ケアマネ関連では、いわゆる“ケアプラン有料化”やAI(人工知能)を活用した科学的なケアプランの実用化、そして“ローカルルール”の問題などが焦点となる。
今週の26日には、参院選後初の介護保険部会が開かれる予定で、今後の議論のスケジュールについて、厚労省側が何らかの提案をする可能性もある。
■新処遇改善加算の届け出期限迫る
東京・霞が関ではこれから、20年度予算の「概算要求」の編成作業が大詰めを迎える。各府省庁は毎年夏、「来年度、この事業をやりたいので、これぐらいのお金がほしい」という要望を書面にまとめ、国の“金庫番”である財務省に提出する。これが「概算要求」で、8月末が提出期限となっている。
同月末は、介護サービス事業者にとっても重要な期限を迎える。10月に新設される「介護職員等特定処遇改善加算」の届け出期限だ。通常は、加算を取得する前年度の2月末までに、自治体に計画書を提出するが、今年度に限り、8月末が期限となっている。ただ、居宅介護支援事業所は加算の対象外となっており、施設のケアマネが恩恵を受けられるかどうかが焦点だ。
■臨時改定、限度額なども引き上げへ
9月には、内閣改造が行われる可能性もある。介護や医療の関連では、やはり厚労大臣の去就に注目が集まるだろう。
その翌月には、消費税率が8%から10%に引き上げとなり、それに伴う臨時の介護報酬改定が行われる。居宅介護支援の基本報酬は、「I」から「III」まででいずれも増額となり、このうち、ケアマネの担当件数が40件未満の「I」は、要介護1・2で現行より4単位多い1057単位、要介護3~5で5単位増の1373単位となる。
また、区分支給限度基準額や福祉用具貸与の上限価格も見直される。区分支給限度基準額は、最も低い要支援1で290円増、最も高い要介護5で1520円増となっている。
■ケアマネ試験の受験者数は回復する?
10月には、第22回介護支援専門員実務研修受講試験も行われる。昨年度の試験では、一定の実務経験のある法定資格の保有者らに受験対象が限定された影響で、受験者数が前回より8万人以上減り、合格率も10.1%で過去最悪を記録。この“ダブルパンチ”によって、合格者数は4990人となり、試験が始まった1998年度以降で初めて1万人を割った。今年度の合格発表は12月3日の予定。
■診療報酬改定は、入退院支援に注目
このほか、診療報酬改定にも触れておきたい。来年春は2年に1度の改定年に当たり、来年2月上旬には改定案がまとまる見通しだ。改定案の検討は、「中医協」の通称で知られる厚労大臣の別の諮問機関で行われ、大まかな内容は年内に固まる。ケアマネ関連では、介護報酬の「入院時情報連携加算」などにも影響を与える入退院支援の行方に注目したい。