認知症の人やその家族が地域で安心して暮らせる共生社会の実現に向け、自民・公明両党は20日、認知症基本法案を衆院に提出した。法案では、都道府県や市区町村による「認知症施策推進計画」の策定を努力義務とし、既存の介護保険事業計画などと調和を保ちながら、施策を進めるとしている。両党では、野党との協議などを経て、次の国会での成立を目指すとしている。
法案では、「急速な高齢化の進展に伴い認知症の人が増加している現状等に鑑み、認知症の予防等を推進しながら、認知症の人が尊厳を保持しつつ社会の一員として尊重される社会の実現を図る」ことを目的として掲げている。
その上で、国や自治体、医療・福祉サービスの従事者、公共交通機関や小売業など認知症の人が生活する際の基盤となるサービス事業者、国民に対して、それぞれが果たすべき責任などが明記されている。
医療・福祉サービスの従事者については、国や自治体が実施する認知症施策に協力し、良質・適切なサービスを提供することを努力義務としている。また、国民に対しては、「認知症に関する正しい知識を持ち、認知症の予防に必要な注意を払うよう努めるとともに、認知症の人の自立及び社会参加に協力するよう努めなければならない」としている。
さらに、認知症への国民の関心と理解を深めるため、「世界アルツハイマーデー」となっている9月21日を「認知症の日」、同月を「認知症月間」として定めている。
■当事者らの意見聴取も努力義務に
認知症施策を着実に進めるため、政府は、首相を本部長とする「認知症施策推進本部」を内閣に設置。同本部は、具体的な目標や達成時期などを盛り込んだ「認知症施策推進基本計画」を策定し、少なくとも5年ごとに見直しを検討し、必要な場合は変更を加える。また、法律の施行後5年以内をめどに総合的な対策の検討を進め、その結果を踏まえて必要な措置を講じる。
一方、都道府県と市区町村に対しては、国の「基本計画」などを踏まえた「認知症施策推進計画」の策定を努力義務として課し、こちらも同様に、5年ごとに見直しの要否を検討する。「推進計画」を立てる際は、既存の医療・介護計画などの施策との調和を図るとともに、認知症の人や家族らから意見聴取を行うよう努めるとしている。
国や自治体が行う基本的な施策としては、▽認知症に関する教育の推進▽認知症の人の生活におけるバリアフリー化の推進▽認知症の人の社会参加の機会の確保▽認知症の予防▽保健医療・福祉サービスの提供体制の整備▽相談体制の整備▽研究開発の推進―などが掲げられている。