政府は、来年度の予算編成に向けた基本的な考え方となる「骨太方針2019」を閣議決定した。AI(人工知能)を活用したケアプラン実用化への取り組みを推進する方針が示されたほか、自治体ごとに申請書類などが異なる“ローカルルール”については、「国と地方の連携により、標準化・ガイドライン化を進める」としている。
21日の経済財政諮問会議で発言する安倍首相(首相官邸のHP)
今回の骨太方針では、「『令和』新時代:『Society 5.0』への挑戦」という副題が付けられた。「Society 5.0」は、AIやロボット、IoT(身の回りのあらゆる物がインターネットとつながる仕組み)、ビッグデータなどを活用して、経済の発展や社会課題の解決を図ろうとする新たな社会の形で、国の成長戦略の一つとなっている。
このため、介護分野では「栄養状態を含む高齢者の状態やケアの内容等のデータを収集・分析するデータベースの構築」や「AIも活用した科学的なケアプランの実用化に向けた取り組みの推進」といった具体策が盛り込まれた。
また、行政手続きの「100%デジタル化」に向け、「介護、保育、福祉の現場等を中心に、自治体ごとにバラバラな申請書類・添付書類等について、国と地方の連携により、標準化・ガイドライン化を進める」とし、いわゆる“ローカルルール”の解消に取り組む方針も示された。
一方、「凍結」の可能性も取りざたされている消費増税については、今年10月に税率を10%に引き上げる方針が改めて示され、介護職員や障がい福祉人材への処遇改善の実施も明記された。このほか、働き方改革を推進するため、介護休暇制度の基準を緩和し、1時間単位でも介護休暇を取得できるよう、「必要な法令の見直しを行う」としている。
■“負担増”の議論は参院選後に本格化
昨年夏の「骨太方針2018」では、ケアプランの作成について「給付のあり方を検討する」と明記されたが、今回はその文言が削除されている。
会見で記者の質問に答える茂木担当大臣
ただ、「年金及び介護については、必要な法改正も視野に、2019年末までに結論を得る」としたほか、「骨太方針2018及び改革工程表の内容に沿って、総合的な検討を進め、骨太方針2020において、給付と負担のあり方を含め社会保障の総合的かつ重点的に取り組むべき政策を取りまとめる」としており、議論の俎上に載っている点に変更はなさそうだ。
社会保障の給付と負担の見直しについて、茂木敏充経済再生担当大臣は21日の記者会見で、「参院選が終わると、予算編成に向けた作業が始まるので、まずはその議論をしなければいけない。その後、できるだけ速やかにこの議論をスタートさせたいと思っている」と述べた。