社会福祉協議会の職員のケアマネジャーが、認知症など精神状態が不安定な利用者の印鑑を無断で用意し、モニタリング時のサービス利用票などに許可なく使用していた事例が、京都府内で相次いでいる。八幡市では、利用者95人分(99本)の印鑑の不正使用が、市と府の立ち入り調査で発覚。また、城陽市社協の内部調査では、利用者5人分(5本)の印鑑が不正に使われていたことが明らかになった。事態を重く見た府社協では、各市区町村社協に対して、文書などで注意喚起した。
八幡市が7~15日行った聞き取り調査で、八幡市社協のケアマネ4人は、印鑑の不正使用を認めた。不正使用は約10年前に始まり、徐々に印鑑の数が増えていったという。ただ、ケアプランの説明やモニタリングを怠っていた事実は、現段階で確認できていない。
同市によると、ケアマネが不正に使った印鑑の利用者の大半は、認知症などで精神状態が不安定だったという。市の担当者は、「混乱して暴れるなど、ケアマネが身の危険を感じたケースもあったようだ」と一定の理解を示した上で、「不適切だったことは間違いないが、現段階では悪質性は低いと考えている」と話す。
■城陽市社協、報道後の内部調査で発覚
八幡市社協の不正使用のニュースが、23日に新聞報道で取り上げられたことを受け、城陽市社協が内部調査を実施。その結果、複数のケアマネが利用者5人分の印鑑を無断で用意し、本人や家族の許可無くモニタリング時のサービス利用票で使用していたことが発覚した。
同市社協では、「認知症や寝たきりの方で、ご本人が対応できなかったり、ご家族と連絡が取れなかったりしたため、代わりにやってしまったようだ」としているが、モニタリング自体は適切に行われていたという。
府社協では23日付で、各市区町村社協に対して文書を送り、同様の事例がないか確認を求めるとともに、法令順守に改めて努めるよう注意喚起した。また24日には、各市区町村社協の代表者を集めた会合を開き、不正使用が確認された場合、府や保険者に速やかに報告するよう求めた。
■「押印の時期は保険者判断」―厚労省
現行の居宅介護支援の運営基準では、「特段の事情のない限り」、「少なくとも一月に一回、利用者の居宅を訪問し、利用者に面接すること」「少なくとも一月に一回、モニタリングの結果を記録すること」と定められている(第13条14項)。
今回のケースでは、利用者や家族から押印してもらえず、月末に間に合わない可能性があることに焦ったケアマネが、印鑑の不正使用に手を染めた可能性も指摘されている。
厚生労働省の担当者は、「少なくとも月1回、モニタリングを行い、その記録を残すことが原則だが、意思の確認が困難な場合には、さまざまなケースが考えられるため、国が一律に基準を示す話ではない」とし、サービス利用票における押印の時期については、保険者側の判断に委ねられるとの見解を示した。