70歳代の認知症の有病率を10年間で1割低下させる―。そんな目標を国のKPI(重要業績評価指標)として掲げることを、有識者会議が政府に提案した。提案では70歳代の人の認知症の発症を遅らせるため、2025年までに「通いの場」の拡充や医療・介護関係者への認知症に関する研修の充実などの取り組みを促進するとしている。
有識者会議では、団塊の世代が75歳以上となる25年までの認知症施策の大まかな内容(大綱)を、素案として示した。
大綱の素案では、認知症の人が住み慣れた地域で、尊厳が守られながら暮らし続ける「共生」の取り組みと、認知症の発症や重症化の「予防」の取り組みを、「車の両輪として進める」と標榜。その上で、次の目標をKPIとして掲げた。
「70歳代での(認知症の)発症を10年間で1歳遅らせる」
この目標を認知症の有病率に置き換えると、10年間で約1割の低下となる。計画期間である25年までの6年間には、有病率の6%の低下を目指すことになる。実現すれば、70歳代前半の有病率は3.6%から3.4%に、70歳代後半は10.4%から9.8%に下がることになるという。
大綱の素案では、その実現に向け、主に次の取り組みを進めるとした。
・介護予防に資する「通いの場」への参加率を高める
・成人の週一回以上のスポーツ実施率を65%程度に高める
・認知症予防の取り組みのガイドラインを作成
・企業・職域型の認知症サポーターを400万人養成する
・医療・介護従事者向けの認知症に関する各種研修で、「意思決定支援に関する研修プログラム」の導入率を100%とする
・認知症地域支援推進員を全市町村に配置
・認知症カフェを全市町村に普及
・BPSD(行動・心理症状)の予防のガイドラインや治療指針の作成
提案を受け政府は、大綱を6月にも正式決定する見通し。ただし、素案が掲げた数値目標が実際に盛り込まれるかどうかは不透明だ。
■「十分実現可能性のある目標」―根本厚労相
17日の閣議後の記者会見で、素案が掲げた認知症予防の数値目標の実効性を問われた根本匠・厚生労働相は「運動不足や糖尿病、高血圧などが認知症の危険因子として指摘されており、そうした危険因子への取り組みを通じて十分実現可能性のある目標であると考えている」と答えた。