利用者やその家族からハラスメントを受けた結果、仕事を辞めたいと思ったことがあるケアマネジャーが35%いることが、三菱総合研究所の調査で分かった。調査では、入所・入居系のサービスでは暴力などのハラスメントが多い傾向がある一方、訪問系のサービスでは、激しい言葉や威圧的な態度で介護従事者を苦しめるハラスメントが多いことも分かった。この結果を踏まえ、厚生労働省では介護現場におけるハラスメント対策マニュアルを策定。介護保険最新情報として発出し、周知を図っている。
三菱総合研究所では、2018年度の厚労省老人保健健康増進等事業として、介護施設や事業所における利用者や家族らから介護従事者へのハラスメントの実態を調査。2155カ所の施設・事業所と、1万112人の介護従事者から有効回答を得た。
過去に利用者の家族からハラスメントを受けたことがある職員の割合をサービスごとに調べたところ、最も高かったのは居宅介護支援の30%だった。一方、利用者からハラスメントを受けたことがある職員の割合では特別養護老人ホーム(特養、71%)が最も高く、次いで高かったのは認知症デイサービス(64%)だった。居宅介護支援は46%だった。
■ケガをしたり、病気になったりした職員の割合は?
ハラスメントを受けたことで仕事を辞めたいと思った職員の割合を調べた調査では、定期巡回・随時対応型訪問介護看護が37%で最も高く、以下は特定施設入居者生活介護と特養(いずれも36%)、居宅介護支援と看護小規模多機能型居宅介護(いずれも35%)の順となった。
ハラスメントによってけがをしたり、病気になったりした職員の割合では、特養が22%で最多。居宅介護支援は8%だった。
■対策、「特にない」居宅介護支援は2割余
さらに調査では、事業者による防止対策の有無やその種類についても調べた。対策としては、「特定の職員が特定の利用者を長期間にわたって担当しないようにする」や「同性介助を実施するようにする」などの工夫をしている施設や事業所が多かったものの、それらの取り組みを行っている事業所は「概ね半分以下にとどまっていた」という。なお、居宅介護支援では防止対策が特にないという事業所の割合は、各サービスの中でも最も高い21.2%だった。
■対策マニュアルを周知―厚労省
こうした結果を踏まえ、厚労省では「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」を作成。介護保険最新情報として周知した。マニュアルでは、それぞれの施設や事業所で相談窓口の設置やハラスメントに対する基本方針の策定などが必要と指摘。効果的な実践例についても紹介している。