自然科学研究機構分子科学研究所は、12月9日、アルツハイマー病の原因と考えられるアミロイドβ線維の形成過程を解明したと発表した。同研究所の奥村久士准教授と伊藤暁助教の研究による。
アルツハイマー病はアミロイドβペプチドが直線状に凝集してできたアミロイド線維が原因と考えられ、このアミロイド線維は一方向にしか伸長しないことが知られているが、その理由はわかっていなかった。
研究では、コンピューター上で分子の運動を計算する分子動力学シミュレーションでAβアミロイド線維の構造と運動を調べた。その結果、Aβアミロイド線維は2枚のβシート構造を形成し、その末端に溶液中から別のAβペプチドが次々と結合していくことによってアミロイド線維が伸長するが、Aβアミロイド線維の一方の末端では2枚のβシート構造はいつも近づいているのに対し、もう一方の末端では2枚のβシート構造は近づいたり離れたりして揺らいでいることを発見した。その揺らぎが大きいと新たなAβペプチドが結合しにくく、Aβアミロイド線維が一方向にしか伸長しないことの原因であると考えられるという。
この発見はAβアミロイド線維が伸長する機構を理解するのに役立ち、将来的にはアルツハイマー病の原因物質が生成されないようにするための薬剤開発に応用されることが期待される。
◎自然科学研究機構分子科学研究所
https://www.ims.ac.jp/news/2016/12/09_3585.html