発酵乳由来成分で中高齢者の認知機能が改善する可能性があることが、アサヒグループホールディングの研究により、明らかになった。
同社では、長年にわたる発酵乳の機能性研究の中で、独自の発酵乳がマウスの記憶力改善に役立つことを確認。さらに、発酵の過程で乳酸菌が作り出すある種のペプチドがその関与成分であることを明らかにし、それを「ラクトノナデカペプチド」と名付けた。今回、同社コアテクノロジー研究所が、この「ラクトノナデカペプチド」のヒトへの有効性と、マウスを用いたアルツハイマー型認知症予防の可能性を検証した。
研究では、物忘れを自覚する50~70歳の健康な中高齢者男女計60名を2グループに分け、ひとつのグループには「ラクトノナデカペプチド」を含む乳酸菌発酵乳飲料(2.4mg配合)を、もう一方のグループには含まない乳飲料(プラセボ)を、それぞれ8週間飲んでもらい、神経心理テストを用いて飲用前後の認知機能を評価した。
その結果、「ラクトノナデカペプチド」を含む発酵乳飲料を摂取したグループでは、飲用前と比較して飲用後に認知機能の総合評価、集中力、短期記憶において有意な改善が認められた。一方、プラセボを摂取したグループでは、このような変化は認められなかった。
アルツハイマー型認知症予防の可能性を探るためには、アミロイドβを投与した「アルツハイマー型認知症モデルマウス」を用いた。正常なマウスに「ラクトノナデカペプチド」(0.1mg/kg)または水を15日間経口投与し、開始して8日目にアミロイドβを投与した。15日間の投与終了後、Y字迷路試験を用いて評価したところ「ラクトノナデカペプチド」投与マウスでは記憶障害が有意に抑制され、海馬内では脳の萎縮を抑制すると考えられるBDNF遺伝子の発現量が増えていることがわかった。
同社では、かつて「ラクトノナデカペプチド」に記憶力を向上させる作用があることをマウスを用いた試験で確認している。さらに今回の研究の結果より、「ラクトノナデカペプチド」を継続して摂取することで、ヒトの認知機能が改善する可能性とアルツハイマー型認知症を予防する可能性が示されたとしている。
◎アサヒグループホールディングス ニュースリリース
http://www.asahigroup-holdings.com/news/2016/1028.html