東京商工リサーチによると、2015年の老人福祉・介護事業者の新設法人が2年連続で減少したことがわかった。
新設法人の数は3,116社で前年の3,627社より少なく、14.0%減。2014年の4.4%減より9.6ポイント拡大した。2010年に調査を始めて以来、3番目に少なく、全国9地区すべてで減少した。また、2016年1-6月の新設法人数も1,483社で前年同期より12.3%減少し、通年では3年連続で減少する可能性が高まっている。
業種別の最多は「訪問介護事業」の2,572社(構成比82.5%)。以下、「通所・短期入所介護事業」が315社(同10.1%)、「有料老人ホーム」が107社(同3.4%)と続く。前年比では、前年と同数の「介護老人保健施設」を除く6業種で減少し、減少率が最も大きかったのは「特別養護老人ホーム」の64.8%減(122社から43社)。次いで、「認知症老人グループホーム」の56.0%減(25社から11社)、養護老人ホームやケアハウスなどを含む「その他の老人福祉・介護事業」の49.2%減(126社から64社)の順で、「有料老人ホーム」以外の5業種で拡大した。
資本金別では、1千万円未満の企業が2,802社(前年3,213社)で全体の89.9%を占め、少額で設立する法人が目立った。
地区別では、全国9地区すべてで前年を下回った。2014年に10.1%増で増加率トップだった四国は29.2%減。減少率トップに転じた。東北も27.5%減で、全国の減少率を大きく上回った。都道府県別の新設法人数のトップは、5年連続で大阪府の436社だったが、前年比で11.0%減だった。減少率の高い県では、介護報酬改定や人材確保難などから収益試算を見直す必要が生じ、事業所の新規設立計画の段階で断念したケースも。今後も伸び悩む傾向がうかがえるという。
東京商工リサーチがまとめた2016年1-9月の老人福祉・介護事業者の倒産は77件で、過去最多だった2015年の76件をすでに上回り、本格的な淘汰の時代を迎えていると分析。政府の掲げる「1億総活躍社会」の実現のためには、老人福祉・介護業界の安定と同時に、家族を安心して任せられる環境作りが必要である。と同時にビジネスライクな視点だけでなく、ハード(施設)とソフト(人材)の両面から円滑な事業運営や新規参入を促す細やかな政策支援が求められている、と提言している。
◎東京商工リサーチ 2015年「老人福祉・介護事業者」の新設法人調査
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20161028_01.html