「NMN」と呼ばれる老化制御因子をヒトに投与し、安全性などを確かめる臨床試験を、慶應義塾大学と米国ワシントン大学の研究グループが、世界ではじめて実施することが明らかとなった。
安全性などが確認できれば、加齢関連疾病の治療や予防のための栄養学的アプローチの実現に向けて、つぎの臨床研究への発展が期待できるという。
NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)は、動物に与えると、臓器に存在するNAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)という物質を増やし、加齢に伴って生じる疾病を抑えることがわかっている。
NADは、長寿に関わる「サーチュイン」という酵素を活性化するが、このNADを体内で作るための材料の1つがNMNなのだという。
これまで、NMNをヒトに投与した場合の影響についてはよくわかっていなかったが、研究グループは世界ではじめて、ヒトに投与する臨床試験を行う。安全性や体内で吸収される様子などを調べるのが目的だ。
被験者は40歳以上60歳以下の健康な男性10人で、研究期間中、同じ被験者に異なる量のNMNを摂取してもらい、生理学的検査や血液検査の変化から、安全性などの検討を行う。
ヒトでの安全性と体内動態が確認できれば、さらなる臨床研究への発展が期待できるという。そのため、今回の臨床試験は、医薬品としての開発が目的ではなく、学術的知見を得ることが目的だと慶応大は説明している。
◎慶應義塾大学 プレスリリース
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2016/7/12/20160711_1.pdf