金沢大学は、5月10日、同大医薬保健研究域医学系脳老化・神経病態学と理工研究域バイオAFM先端研究センターの研究チームが、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβタンパク質(Aβ)の凝縮過程の撮影に成功したと発表した。
研究は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校と共同で行った。
アルツハイマー病は、原因物質であるAβが凝集し蓄積していく過程が脳の病変の形成において中心的な役割を果たし、その構造の違いが病気の進行の違いなどに関与していると考えられている。従来は、Aβが脳で集まり始めた時点で形状が定められ、その後は同じ構造が繰り返し作られると考えられていた。
研究では、同大学が開発した分子の動きや構造を精密に撮影できる世界早速の原子間力顕微鏡を使用し、Aβが溶液内で集まる過程の動画撮影に成功した。
その結果、Aβの繊維構造としてすでに知られている「らせん型」と「直線型」に加え、2つの型をあわせ持つ「混在型」が存在すること、混在型は、らせん型→直線型→らせん型のように繊維が変換されながら形成されることを発見した。さらに、溶液の成分を変えるとAβの各型の出現割合が変わることから、Aβの線維構造は周囲の環境によって変化することも明らかになった。
脳内のAβの線維構造を変化させることができれば、アルツハイマー病の発症や進行を制御できる可能性もあり、研究成果の今後の治療研究への活用が期待されるという。
◎金沢大学 研究トピック
http://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/36932