東北大学大学院の出澤真理教授と冨永悌二教授らのグループは、10月5日、脳梗塞で失われた神経機能を回復させる実験に成功したと発表した。
研究グループは、ヒトの骨髄や皮膚などに存在し、身体のさまざまな組織や細胞に分化していく「Muse細胞」と呼ばれる細胞を、脳梗塞を起こしたラットの脳に移植。すると、梗塞部位に生着して、自発的に神経に分化し、大脳皮質から脊髄までの運動・知覚回路網を再構築したという。
Muse細胞はヒトの生体に自然に存在する細胞であるため、移植しても腫瘍化する可能性が極めて低い。また、生着した組織に応じた細胞に自発的に分化するため、移植前に遺伝子導入などの操作をする必要もなく、細胞をそのまま投与するだけで治療ができるという簡便さだ。
研究グループは、Muse細胞が脳梗塞の根本的治療になりうるとして、臨床での実用化をめざす。まずは単純構造の部位で生じた比較的小さな脳梗塞で、麻痺の症状がみられる「深部白質梗塞」に対する治療を開発していくという。
◎東北大学 プレスリリース
http://www.med.tohoku.ac.jp/uploads/151005sn.pdf