独立行政法人国立長寿医療研究センターは、7月14日、認知症高齢者の徘徊に関する調査研究を開始したと発表した。
調査研究は厚生労働省の厚生労働科学特別研究事業として行われ、研究班長を同センターの鈴木隆雄研究所長が務める。
高齢化の進行とともに認知症高齢者は増加し、最近の研究によれば、軽症者を含めた日本の65歳以上高齢者の認知症有病率は15%、2012年時点で462万人、軽度認知障害( MCI )は13%、400万人と推計されている。
認知症における徘徊の問題は、今後認知症の人が住み慣れた環境で暮らし続けられる社会を目指す上で、極めて重要な問題である一方、徘徊に関する実態の把握は十分になされていない。
研究では、自治体等関係者へのアンケートを通して、日本における認知症高齢者の徘徊に係る現状を把握するとともに、個別例についての詳細な検討をする。例えば身元が特定され、無事に住み慣れた環境へ帰ることができた人とそうではなかった人、また亡くなった人の例を比較検討することで、徘徊の発生や徘徊の転帰を予測できるような要因の抽出を行う。
また、海外における捜索・救助プログラムなどについても調査する予定だ。
研究では、同センターに加え、国立保健医療科学院、地方独立行政法人東京都健康長寿医療研究センターの研究者の参加を得るほか、多くの関係者の協力の下に以下の課題に取り組む。
■認知症高齢者の徘徊とその転帰に関する国内外の文献収集
■認知症高齢者の徘徊と防止するための国内外の先進事例収集
■認知症高齢者の徘徊とその転帰に関する実態調査
■国立長寿医療研究センターもの忘れ外来受診の認知症高齢者(とその家族)のcase-control研究による徘徊の要因や発見状況についての分析
同センターは、結果のとりまとめは本年度中に行う予定としている。
認知症高齢者の徘徊、行方不明問題に社会的関心が集まっている今、国の事業として実施される調査研究の成果に期待がかかる。
◎独立行政法人国立長寿医療研究センター
http://www.ncgg.go.jp/