厚生労働省アフターサービス推進室は、6月30日、「訪問看護ステーションの事業運営に関する調査」の調査結果を公表した。
内閣府「平成25年版高齢社会白書」によると、わが国の高齢化率(65歳以上の高齢者人口が総人口に占める割合)は、2012年の24.1%から2035年には33.4%に上昇すると推計されている。こうした中、医療技術の進歩や平均在院日数の短縮化により、高齢者層を中心に医療ケアを必要とする在宅療養者の数は、今後、大幅な増加が見込まれる。
この調査は、訪問看護ステーションが「日常的な在宅医療ケア」を安定的かつ持続的に提供し得るため、訪問看護ステーションにおける現状を事業運営という観点からヒアリングを通じて調査し、今後の施策に資することをその目的としている。
国民に「日常的な在宅医療ケア」を安定的かつ持続的に提供するためには、訪問看護ステーション自体の運営が健全でなければならない。訪問看護は、個別訪問しつつきめ細かな対応をする必要があることから、事業としての効率性を追求し難いサービスと言えるが、各訪問看護ステーションでは、人的な体制(看護師等の人数、特に24時間対応体制など)と看護サービスの質(習熟度や対応可能な疾患の種類など)の両面での充実に取り組んでいる。この調査では、今後の制度改善に資するため、事業関係者の皆様から日々の事業運営上の問題点や気付き事項等についてヒアリング調査を行った。
ヒアリング調査には、地域及び規模のバランスを勘案して選択し、ヒアリングに同意した計55団体の訪問看護ステーションに協力を依頼。なお、これらの団体は全国の訪問看護ステーション及び関連団体を代表するものではない。
■ヒアリング結果:
1)多くの小規模な訪問看護ステーションは資金調達力が弱く、事業の健全な経営の阻害要因の一つとなっている。
2)訪問看護の業務にスケール・メリットは期待できないことから、訪問看護ステーションの規模が大きくなると、管理業務が増える。管理業務に対する報酬は無いので、管理者も自ら訪問看護を続けざるを得ず、業務量が過剰になるケースがある。
3)経営コンサルタント、税理士等、専門のアドバイザーを常時活用している訪問看護ステーションは殆ど無いが、小規模な訪問看護ステーションが単独でアドバイザーを雇うのは難しい。
4)都道府県における訪問看護事業所数には、地域間格差がみられるが、利用者ニーズの多寡や分布、交通インフラの整備状況など様々な要因を勘案のうえ、一歩一歩、地域に合った改善策を粘り強く積み上げて行く必要がある。
5)多様な利用者ニーズに自事業所内で的確に対応しようとすると、事業規模の拡大や多角化を図る必要性が強まってくる。多角的に事業を展開させるためには、相応の経営ノウハウが不可欠であり、専門的な見地からのサポートが必要と思われる。
■まとめ:
訪問看護サービスは、今後、利用者数の大幅な増加が見込まれているにもかかわらず、利用者が地域に限定されるうえ人手を要し効率が悪いなど、事業展開に当たっての制約要因を指摘できる。
しかしながら、今回のヒアリング調査を通じ、それらの制約要因を打ち破って「地域の拠り所」としての役割を発展的に果たしている訪問看護ステーションが、多くみられた。今後とも、各地域における在宅医療の核としての活躍が期待される。
◎訪問看護ステーションの事業運営に関する調査詳細
http://www.mhlw.go.jp/iken/after-service-vol15/dl/after-service-vol15_2.pdf