警察庁は、6月5日、高齢運転者の交通事故防止についてのアンケート調査の結果を発表した。
認知機能が低下した高齢の運転者が高速道路を逆走するなど、高齢者の自動車運転の危険性が問題になっている。警察庁によると、運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数は、75歳以上が75歳未満の約2.5倍にのぼるという。昨年の国会では、高齢運転者が加害者となる事故を減らすため、「抜本的な対策を検討する」旨の附帯決議がなされている。
アンケートは、このような状況を受け、高齢運転者対策を検討するため、運転免許試験場などで3,000名(75歳以上369名)を対象に行った。
その結果、約9割が高齢者の交通事故を防ぐために「何らかの対策をすべき」と回答したが、移動手段がないなど運転をやめさせるのは難しいという声も少なくなかった。
また、75歳以上へのアンケートでは、高齢になり、慎重な運転を心がけてはいるが、とっさの動作や操作がスムーズにできなくなったことを自覚している高齢者が多いことも明らかになった。
アンケートの主な結果は以下のとおり。
■高齢家族の運転は「やむを得ない」「まだ大丈夫」が8割近く
「75歳以上の高齢運転者による交通事故についてどのように考えるか」という質問では、約9割が「深刻な問題であり、交通事故対策の中でも、高齢運転者対策に最優先で取り組むべきである」「問題であり、高齢運転者による交通事故を少しでも減らすために対策をとるべきである」と回答した。
75歳以上の高齢運転者に対する印象については、68.9%が「ブレーキを踏むのが遅れるなど反応が遅い」、56.3%が「周囲の状況に注意を払わない」との印象を述べた。
家族で免許を持っている75歳以上がいるのは回答者の19.5%で、その16.8%が「危険だと思うので、運転をやめてほしい」と回答した。一方、「危険だと思うが、移動手段がないので、運転はやむを得ない」との回答は33.4%で、「今は大丈夫だと思うが、体が衰えてきたら運転をやめてほしい」が45.7%だった。
高齢運転者は、加齢に伴う身体機能の低下により、運転能力が低下している可能性がある。高齢運転者に対してどうように対策していくか、例示して訊ねたところ(複数回答)、「加齢に伴う運転能力の低下には個人差があるので、各高齢運転者の運転能力に応じた対策を推進すべきだ」が62.6%でもっとも多く、「加齢に伴い運転能力が低下している可能性が高いので、一定年齢以上の高齢者には運転を認めないこととすべき」も23.4%いた。「加齢に伴い運転能力が低下したとしても、高齢者が不自由なく生活できるように、公共交通機関などを充実させるべき」は48.6%だった。
■慎重な運転を心がけるも、動作や操作のしにくさを実感する傾向
75歳以上の人を対象に、運転に際して若い頃と比べて変化を感じるているかどうかを訊ねた。以下は、項目ごとに「感じる」「やや感じる」と回答した割合。
「慎重に運転するようになった」84%
「経験を積み、上手に運転できるようになった」54.7%
「夜間やトンネル内で見えにくくなった」74.8%
「信号機や一時停止線を見落としやすくなった」39.6%
「とっさの動作や複雑な動作がスムーズにできにくくなった」59.6%
「ハンドルやブレーキの操作がスムーズにできにくくなった」68.8%
「車線からはみ出しそうになることが多くなった」21.4%
「新しく変更された交通ルールを覚えにくくなった」55.8%
◎警察庁
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