富士フイルムホールディングス株式会社は、6月9日、かねてより臨床試験を行っていたアルツハイマー型認知症治療薬「T-817MA」の開発を加速させると発表した。
認知症の患者は、現在世界中に4,400万人いると推定されており、平成42年には7,600万人に増えると予測されている。その内、アルツハイマー型認知症の患者が半分以上を占めており、今後もその傾向は続くと見込まれている。現在、アルツハイマー型認知症の治療薬として、ドネペジル塩酸塩を始めとするアセチルコリンエステラーゼ阻害薬などが処方薬として使われている。しかし、これらの治療薬は、神経伝達能の増強などによる一時的な症状改善にとどまるため、新たなアルツハイマー型認知症治療薬の登場が待たれている。
「T-817MA」は、富山化学工業が見出したアルツハイマー型認知症治療薬で、強力な神経細胞保護効果、神経突起伸展促進効果を有し、病態動物モデルにおいて高い治療効果を示すことが確認されている。
日本では、富山化学工業が平成24年より第 I 相臨床試験を実施。同試験にて「T-817MA」の安全性および忍容性を確認したため、ドネペジル塩酸塩で治療中のアルツハイマー型認知症患者を対象とした「T-817MA」の有効性および用量反応性を検討する第II相臨床試験を5月末より開始した。また米国においては、昨年、富士フイルムがアルツハイマー型認知症領域で豊富な臨床試験の経験を有するADCS(※)と共同で第II相臨床試験を実施することを決定。本年6月より、日本の試験と同じ用法・用量の第II相臨床試験をスタートさせた。今後、日・米における同用法・同用量での臨床試験体制の下、「T-817MA」の開発を進めていく。
「T-817MA」は、高齢化社会の進展に伴って急速に増加しているアルツハイマー型認知症患者に対して、高い治療効果が見込める革新的な薬として期待されている。今後、富士フイルムグループは、京都大学iPS細胞研究所と実施している、患者由来iPS細胞を用いて「T-817MA」の有効性を予測するバイオマーカーの特定などを目指す共同研究も活用して、「T-817MA」の開発をさらに加速させていく。
※ADCS……アルツハイマー型認知症治療薬の創出を目的に、国立衛生研究所(National Institute of Health)の傘下である国立老化研究所(National Institute on Aging)の基金で設立された研究機関。米国でアルツハイマー型認知症領域の権威の1人であるDr.Aisenが責任者を務める。拠点はカリフォルニア大学サンディエゴ校(カルフォルニア州)。
◎富士フイルム株式会社
http://www.fujifilmholdings.com/ja/index.html