株式会社富士通研究所は、カメラを用いて入院患者のベッドでの起き上がり(起床)、ベッドからの立ち去り(離床)やベッド上での行動を高精度に検知する患者の状態認識技術を開発した。
病院や介護施設において、看護師が気付かないうちに入院患者がベッドを離れて徘徊・転倒する事故や、痛みなどで寝つけないなどの状況に看護師が気付くのが遅れることがある。従来用いられていた、人の重さの圧力を検知するセンサーでは、寝返りに反応してしまうなど検知がうまくいかない場合があり、看護師が頻繁に確認する必要があった。
今回、カメラで撮影した患者の頭部を認識して追跡する高精度な起床・離床センシング技術と、カメラ画像から看護師が注意すべき患者の行動を可視化する技術を開発した。
これにより、病院や介護施設での質の高い見守りを実現するとともに、業務負荷を軽減できる。
■特長
1.患者の状態に応じた学習データ選択
ベッド上での患者の状態を、患者の姿勢に応じて5つに分類し、その遷移関係を定義。患者の頭部の見え方は状態に依存するため、あらかじめ状態ごとに頭部の現れる位置を設定し、状態ごとに、その位置での頭部の見え方(向きや大きさなど)に限定した学習データを作成した。
認識時は、遷移関係に基づいて現在の状態と次に起こりうる状態に限定した学習データを使用し、患者の状態に応じて選択することで、高精度な頭部認識を実現した。
2.動き情報を利用した誤検出低減
患者の状態に応じた学習データの選択を行っても、枕や布団などを誤って認識してしまう場合がある。そこで、患者が起床・離床するときには必ず動きを伴う点に着目し、画像内で頭部の可能性のある複数の領域を頭部候補として抽出。複数の候補の中から起床・離床と思われる動きを行った頭部候補を頭部と確定し、動きがない場合や確定後に動きが止まった場合は、再び頭部候補に戻して、改めてすべての頭部候補の観測を継続する。こうすることで、枕や布団などを誤認識しても起床・離床とは異なる動きとなるためすぐに頭部の確定が解除され、患者が動いたときに正しい頭部を認識できる。
3.注意すべき患者の動きの可視化
医療従事者などの意見を参考に、通常の行動・動きと注意すべき行動を定義することで、注意すべき患者行動を簡単に把握することができる。
同社は、看護師への緊急報知システムや電子カルテシステムと連携する見守りシステムなどの実現に向け、2015年度に本技術の実用化を目指す。さらに、病院や介護施設だけでなく、高齢者向けの在宅サービスなど、在宅での介護・看護への適用も視野に入れ、本技術の研究開発を進める。
◎富士通研究所
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