岩波新書より昨年11月に発行された『医学的根拠とは何か』(津田敏秀著)が、発行以来、新書ランキングで上位にランクインされ、ベストセラーとなっている。
「医学的根拠」とは、よく「エビデンス」という言い方で、学会やセミナーの場などで頻出する。ケアの方法にも「エビデンス」が必要だし、「○○の根拠を示せ」と、介護の世界でもよく言われることだ。しかし、その「医学的根拠」とは、そもそもなんなのか。
同書は、多くの公害事件や薬害事件などで被害が拡大しているのは、医学的根拠が混乱しているからだとし、その混乱の元は、医師としての個人的な経験を重視する直感派医師と、生物学的研究を重視するメカニズム派医師にあるとする。臨床データの統計学的分析(疫学)という世界的に確立した方法が、なぜ日本では広まらないのか。医学専門家のあり方を問う問題の書となっている。
【目次】
序章 問われる医学的根拠-福島・水俣・PM2.5
第1章 医学の三つの根拠-直感派・メカニズム派・数量化派(繰り返される三つ巴の論争/現代医学の柱は数量化、対象は人)
第2章 数量化が人類を病気から救った-疫学の歩み(数量化を始めた人々/疫学の現代化/病気の原因とは何か)
第3章 データを読めないエリート医師(数量化の知識なき専門家/水俣病事件/赤ちゃん突然死への対応を逸した研究班)
第4章 専門家とは誰か(進まない臨床研究/日本の医学部の100年問題/診察室でデータを作る時代)
■書名:医学的根拠とは何か
■著者:津田敏秀
■発行:岩波書店
■体裁:新書・190ページ
■価格:720円(税別)
◎岩波書店
https://www.iwanami.co.jp/