国際糖尿病連合(IDF)世界糖尿病会議は、12月、糖尿病患者の心理的・社会的側面に焦点をあてた世界的な調査研究調査の結果を、同会議のシンポジウムで発表した。
その結果を公表したノボ ノルディスク ファーマ株式会社によると、治療計画を決定する際に担当の医療チームから意見を求められた患者は29.2%(日本では13.6%)であったことが明らかになった。さらに、診察時に分からないことがあれば質問をするよう医師や看護師などの医療従事者から促された患者も33.6%(日本では21.4%)にとどまったことがわかった。
調査に参加した医療従事者の84.3%(日本では71.0%)は、患者が診察の前に糖尿病に関する質問を準備しておいてくれることは、治療をするうえでの助けになると回答している。
デンマークのステノ糖尿病センターのイングリッド ウィライング博士は、「周囲からの支えを実感し、自己管理に自信が持てている患者さんは、良好な治療結果が得られる可能性が高まり、糖尿病とともにより良い生活を送ることができます。調査では、積極的に治療に関与するよう促されている患者さんがあまりにも少ないことが浮き彫りになりました」と述べている。
■患者の心理的ケアが課題
同調査の日本の主任研究者である奈良県立医科大学糖尿病学講座の石井 均教授は、「日本では、患者さんの治療に対する考え方や心理的状況を把握するための、医療従事者と患者さんのコミュニケーションが不足しています。患者さんが治療方針へ積極的に関与することは糖尿病のアウトカムにもつながる重要な点です。調査から得られたこの結果を踏まえ、限られたリソースの中で患者さんの心理的なケアをどのように行っていくかが課題です」と述べた。
IDF会議では、調査に関する他の結果も発表され、生活の質(QOL)、家族への支援、糖尿病に関する教育および心理的・社会的ケアへのアクセス、社会の中での糖尿病に関する前向きな認識、そして糖尿病にかかりやすい人々特有のニーズに対する組みといった問題点が取り上げられた。
調査の結果は、糖尿病患者やそのご家族を中心に考え、糖尿病ケア、教育、コミュニティーのサポートを改善する機会を浮き彫りにしている。以下、調査結果を紹介する。
■糖尿病患者:
多くの患者が慢性疾患に対するパーソン センタード ケア(person-centered care:心理的・社会的側面も配慮した「その人中心のケア」)を受けていないと回答。糖尿病がどのように生活に影響を与えているかについて医療チームから尋ねられたことがあると回答した割合が日本は低かった。
糖尿病管理を支援する教育、情報、サポートツールやサービスなどを利用していない割合が日本は高かった。
■家族:
家族は糖尿病である家族をサポートすることが、中程度以上の負担であると感じている。家族の糖尿病ケアに今より多く関わっていきたいと考えており、糖尿病に向き合う気持ちを助けていきたいと考えている。
■医療従事者:
過去12カ月に定期的に来院した患者に対して、慢性疾患に対するパーソン センタード ケアを提供したと半数前後の医療従事者が感じていた。たとえば、傾聴、励まし、自己管理を勧めるなどの実践的なサポートあるいはコミュニケーションのサポートを提供したと回答した。半数以上の医療従事者が、糖尿病が生活にどんな影響を与えているか尋ねたと回答しているが、日本はいずれも平均より低かった。
本結果は2013年6月23日に3つの論文が発表されるとともに、第73回米国糖尿病協会年次学術集会でも発表された。
◎ノボ ノルディスク ファーマ株式会社
http://www.novonordisk.co.jp/documents/home_page/document/index.asp