<ヒートショック対策>高齢者を守る温度管理を提言――都老研

東京都健康長寿医療センター研究所(東京都老人総合研究所)は、12月11日、これからの寒い季節に向けて、住居内の温度管理によるヒートショック予防と、居室の断熱改修による睡眠やアレルギー症状、血圧の安定化などの可能性について提言を行った。

冬の室温の低い脱衣所や浴室では、血圧が大きく変動し、失神心筋梗塞脳梗塞などを起こしやすくなる。これをヒートショックといい、高齢者で多く発生することがわかっている。
入浴中の急死にもつながるヒートショックは、脱衣所や浴室の温度管理や、入浴の仕方の工夫などで防ぐことができる。また、冬の室内を暖かく保つことも血圧の安定などに効果があるという。
提言を参考に、この冬、高齢者の健康管理につとめたい。

【住居内の温度管理によるヒートショック予防】
同研究所によると、2011年の1年間で約17,000人がヒートショックに関連した入浴中急死をしたと推計される。ヒートショックは医学用語ではないため、死亡診断書には「溺死」や「病死」と記入され、ヒートショックが原因と思われる死亡の正確な統計データはない。 しかし、家庭のお風呂で溺死する人は年間3,000~4,000人いるという厚生労働省の統計と2012年に東日本全消防本部の81%の調査協力を得て実施した調査結果から推計すると、上記の数値になると推計される。そのうちの14,000人ぐらいが高齢者の方だと考えられる。
外気温が低くなる1月は、入浴中に心肺機能停止となる人が最も少ない8月のおよそ11倍で、増加する原因はヒートショックによるものと言える。

■入浴中の急死につながるヒートショック
ヒートショックとは温度の急激な変化で血圧が上下に大きく変動するなどによって起こる健康被害ととらえる事ができる。失神したり、心筋梗塞や不整脈、脳梗塞を起こすことがあり、特に冬場に多く見られ、高齢者に多い。
ヒートショックは体全体が露出する入浴時に多く発生する。暖房をしていない脱衣室や浴室では、室温が10度以下になることも珍しくはない。寒い脱衣室で衣服を脱ぐと、急激に体表面全体の温度が10度程度下がり、寒冷刺激によって血圧が急激に上がる。この血圧の急上昇が、心筋梗塞脳卒中を起こす原因の一つと言われている。
さらに、一度急上昇した血圧は、浴槽の暖かい湯につかることによる血管の拡張で、反対に急激に低下し、この急激な血圧低下が失神を起こす原因の一つとなる。

高齢者生活習慣病の人はヒートショックの危険性が高い
日頃元気でも、血圧変化をきたしやすく体温を維持する生理機能が低下している高齢者はとくに注意。 また、生活習慣病の人も注意が必要。高血圧の人は、血圧の激しい上下変動により低血圧症が起きやすく、意識を失うこととなる。糖尿病や脂質異常症の人も動脈硬化が進行していることがあるため、血圧の変化には気をつける必要がある。

■暖房器具の設置、お湯はりの工夫でヒートショックを防ぐ
寒い季節、脱衣所や浴室を温かくすることで、ヒートショックは予防可能。トイレも体を露出させる場所なので温かく保つことが重要。

・脱衣所や浴室、トイレへの暖房器具設置や断熱改修
冷え込みやすい脱衣所や浴室、トイレを暖房器具で温める。窓周りは内窓を設置するなどの断熱改修で、外気温の影響を最少限に抑える。浴室をユニットバスへ改修することでも断熱性は向上する。

・シャワーを活用してお湯はりする
高い位置に設置したシャワーから浴槽へお温をはることで、浴室全体を温めることができる。

・夕食前/日没前に入浴する
日中は日没後に比べ、外気温が比較的高く、脱衣所や浴室がそれほど冷え込まない、また、人の生理機能が高いうちに入浴することで、温度差への適応がしやすい。

・食事直後/飲酒時の入浴を控える
食後1時間以内や飲酒時は、血圧が下がりやすくなるため、入浴を控える。

・湯温設定は41℃以下にする

・ひとりでの入浴を控える
可能な場合は家族が見守る、公衆浴場や日帰り温泉などを活用することで、ひとりでの入浴を控える。

【居室の断熱改修による睡眠、アレルギー症状、血圧の改善】
同研究所では、断熱改修の前後における居住環境と高齢者の健康について調査を行った。
東京と埼玉で築20年以上の戸建て住宅に住む高齢者18人(59~85歳)を対象に、日中いることが多い居室を対象に内窓の設置、壁や床への断熱材取り付け、床暖房の設置などの断熱改修を実施。改修の前後で室温や協力者の血圧の測定、健康に関連するヒアリングなどを行い、2011年から約1年間をかけてデータをまとめた。その結果、断熱改修は健康に良い影響を与える可能性があることがわかった。

■居室の断熱改修は、睡眠やアレルギー症状に良い影響を与える
鼻や眼のアレルギー症状に関連する、くしゃみ、鼻づまり、涙目等の7項目について、それぞれ5段階評価でのアンケートを実施したところ、改修後では有意に症状が減ったという結果が出た。また、睡眠習慣について、睡眠の質に関連する、入眠に要する時間、睡眠時間等の7項目について調査したところ、改修後に睡眠の質が改善されたという結果が出た。

■居室の断熱改修は、血圧の低下や安定化に有用である可能性
同調査では、断熱改修後に、血圧の安定化を示唆する変化も見られた。また、同研究所が2010年度に実施した高齢者43人(77~86歳)に対する血圧と室温の24時間測定によると、部屋全体が暖まっている「適温」での生活が血圧の上昇を抑え、安定化に効果的であることがわかった。

■居室全体を暖房し室温が高いと活動量や筋力も高い
同研究所が2008年度に実施した高齢者に対する冬場の暖房方式、室温、活動量の1週間計測によると、暖房方式と居室の室温、活動量には関係があり、部屋全体が暖まっている「適温」で生活をしている高齢者は、活動量が高いという結果が得られている。
また、2007年度に実施した、高齢者住宅の暖房状況と生活習慣・運動機能等の調査において、暖房状況と筋力やバランス能力にも関係があり、居間全体を暖房している高齢者は、筋力のレベルが高いことが明らかになっている。

◎東京都健康長寿医療センター研究所
http://www.tmghig.jp/

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