花王株式会社は、毎日の炭酸入浴と30秒ストレッチング(前屈運動)の併用により歩行機能が向上するとの
研究結果を発表した。
研究は、同社ヒューマンヘルスケア研究センター・パーソナルヘルスケア研究所と、日本赤十字北海道看護大学・山本憲志准教授とが共同で行った。
体幹や脚の筋肉の柔軟性は加齢や運動不足などにより、低下することが知られている。さらにこの体幹や脚の筋肉の柔軟性の低下は「歩く」などの日常生活に支障をきたすことが考えられている。
研究では、高齢の男女を対象に、炭酸入浴とストレッチングが歩行機能にどのように影響するかを調べ、さらに歩行機能に関連するからだの柔軟性への影響を検証した。その結果、炭酸入浴とストレッチングの継続はさら湯入浴とストレッチングの継続に比べて歩行機能を向上させること、また体幹や脚の筋肉の柔軟性も向上することが確認されたという。
研究の成果は、第52回日本生気象学会(2013年11月1・2日、米子市)にて発表している。
【研究の概要】
健常な60代から70代の高齢の男女24名(炭酸入浴+ストレッチング群8名、さら湯入浴+ストレッチング群9名、炭酸入浴群7名)を対象とし、4週間の毎日の入浴(40℃、10分間の全身浴)と浴後の前屈ストレッチング(前屈運動10秒×3回)を実施。
試験浴水には、さら湯(水道水)、炭酸湯(浴水中炭酸ガス濃度約140ppm)を使用した。
1.歩行機能の測定:
・6.4mの歩行路の中央2.4mにシート式圧力センサー型の歩行計測器を使用。
・歩行を制限する服装(コートやスカート)は避け、普段使用している服装を着用。
・シューズを脱いだ状態で「いつもどおりに歩いてください」と指示。自由歩行を測定し、4回測定の平均値を使用。
・歩行機能の解析は幅60cm×長さ240cmのシートに1cm2間隔に配置された14400個の圧力センサーの時系列データから抽出した踵の点を基準点とし、両脚支持期や歩行速度などを評価。
2.長座体前屈測定:デジタル式長座体前屈計を用いて、初期姿勢から最大前屈時の距離を測定。
3.背屈角度と底屈角度の測定:角度測定器を用いて安静仰臥位にて自ら足関節を動かすことで、最大可動域を測定。
【研究の成果】
■毎日の炭酸入浴と30秒ストレッチングにより歩行機能が向上
毎日の炭酸入浴と30秒ストレッチング(前屈運動10秒×3回)による歩行機能に及ぼす影響を検証した。
歩行機能は、シート式圧力センサーを用いて、歩行の時間的パラメータである両脚支持期(歩行時において両足が地面についている時間。バランスが悪く、スムーズな足の運びができなくなるとこの時間が長くなる)と歩行速度に関して測定を行なった。
その結果、両脚支持期ではストレッチング実施群において0週から4週目の変化として両脚支持期が有意に短くなり、スムーズな足の運びになることが示唆された。一方、歩行速度では、炭酸入浴群において4週目で速度が増加する傾向が確認された。このことから、毎日の炭酸入浴とストレッチングの併用により、歩行機能が向上することを検証した。
■毎日の炭酸入浴と30秒ストレッチングが体幹や脚の筋肉の柔軟性を高めることを確認
毎日の炭酸入浴と30秒ストレッチングによる、からだの筋肉の柔軟性(長座体前屈と、学術的にも一般的な方法である足関節可動域で測定)に及ぼす影響を検証した。
長座体前屈は、ストレッチング実施群において4週目で有意に伸張することが確認された。長座体前屈の伸張は、体幹および脚筋肉の柔軟性の向上を示唆しており、バランスがよくなり、歩行時の足の運びがスムーズになることで両脚支持期が短くなる結果が得られたと考えられる。
また、足関節の背屈と底屈角度については、炭酸入浴とストレッチングの併用した群は0週と4週の比較で足関節の両方の角度が有意に増加した。足関可動域の増加により足首が曲げやすくなり、歩行時の踏込み・蹴りだしが改善し、歩行速度の増加につながったと考えられる。
◎花王株式会社
http://www.kao.com/jp/index.html