東北大学大学院医学系研究科中心血圧研究寄附講座 橋本潤一郎准教授と、腎・高血圧・内分泌学分野 伊藤貞嘉教授は、これまで原因不明とされてきた大動脈の硬化に伴う脳梗塞の発症メカニズムを新たに解明した。
高血圧は脳卒中の主要な危険因子として知られている。橋本准教授らは、高血圧患者を対象に胸部下行大動脈の血流を測定し、心臓拡張期に大動脈内で逆行性(頭側方向)の血流が存在していること、さらに大動脈の硬化が進むにしたがってこの逆流が増加することを初めて発見した。
この大動脈逆流の存在は、下行大動脈で形成された粥腫や血栓が頸動脈を経て脳動脈内へ運ばれ発症する「逆行性脳塞栓」の可能性を強く示唆するもの。
大動脈破裂や閉塞は、一瞬にして命を落とすことがある極めて危険度の高い疾病として知られている。特に脳内の太い動脈が閉塞して起こる脳梗塞は、脳主幹動脈や頸動脈内の粥腫(動脈硬化性プラーク)、心房内の血栓などを基盤として発症することが知られている。
しかし、脳梗塞はこうした原因を伴わずに発症する場合も多く、原因不明脳梗塞と診断される場合が少なくない。橋本准教授らは、高血圧患者を対象に胸部下行(かこう)大動脈の血流波形を非侵襲的な方法で記録し、心臓の拡張期に下行大動脈から頸動脈へ向かって血液が逆行性に流出する現象を実証するとともに、大動脈が硬化するにしたがってこの逆流の比率が増加することを発見した。
脳梗塞の原因となりうる大動脈内の不安定なプラークは、脳卒中患者の約20%に存在することが知られており、大動脈内の逆流によってプラークが破綻・遊離し、頸動脈や脳内動脈に流出する結果、逆行性脳塞栓を引き起こす可能性が示唆される。この研究結果から、近年注目されている大動脈の血圧(中心血圧)のみならず、大動脈の血流(中心血流)が脳卒中の発症機序に重要な役割を果たしていることが推測される。
◎東北大学大学院医学系研究科・医学部
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