東日本大震災の被災地の復興策を提言する復興推進委員会は6月5日、「“新しい東北”の創造に向けて」とした復興対策の中間報告をとりまとめた。その中で、在宅医療や介護サービスを24時間提供できる態勢を全国に先駆けて整えることなど、高齢化が進む被災地に配慮した内容も多く盛り込まれた。
同委員会の中間報告は、東日本大震災の被災地で、若い労働者の転出が相次ぐとともに、高齢化が一層加速していることから、全国に先駆けて高齢者中心のコミュニティをつくることを目標に、復興を進めるよう求めている。さらに具体策として、在宅医療や看護、介護サービスを24時間提供できる態勢を整えることや、独り暮らしの高齢者の孤独死などを防ぐために、IT技術を利用して行動を見守るシステムを整備することも提言。
このほか、新たな雇用を確保するため、高台移転した集落の跡地に再生可能エネルギー設備を整備することや、復興事業に当たる人材を幅広く確保するため、民間企業の社員や大学からのインターンを受け入れる仕組みを構築することなどが盛り込まれている。
こうした提案を踏まえ、安倍総理大臣は「被災地の皆さんが将来に夢を持ち、復興への歩みを力強く進めていくことができるよう、中間取りまとめで示された将来の東北の目標像に向け、提言をしっかりと検討していきたい」と述べ、提言の実現に全力を挙げる考えを示した。
高齢者に関する、主な提言(一部のみ)は以下の通り。
■「高齢者標準」による活力ある超高齢社会:
【目標像】
・ 被災地の復興を進める中で、高齢者を地域づくりの標準に据えたモデル的な取組みをいち早く、かつ総合的に進めることにより、高齢者が活き活きと楽しく暮らせるコミュニティ(単に安全でバリアフリー化された空間を作るだけでなく、快適で、人との豊かな触れ合いが可能な包摂力のある『外出したくなるようなコミュニティ』)を構築することを目標とする。
・さらに、このコミュニティを基盤として、高齢者が元気で地域社会に参加し、できるだけ長い間、自立的、快活に、最後までコミュニティの中で暮らし続けられる「生涯現役型社会(エイジング イン コミュニティ)」を全国に先駆けて実現する。
・成果としての東北モデルを、今後、遅れて超高齢化の課題に直面する全国や世界に向けて発信していく。
【現状認識】(被災地における高齢者の生活改善の観点から)
・被災地域では特に高齢化が進んでおり、地域の労働力として高齢者に期待される役割は大きく、高齢者の能力を最大限発揮できる仕組みづくりが必要である。
・仮設住宅への移転により住民が分散したこと、コミュニティスペースの不足等により、従来形成されていた地域コミュニティが希薄化している。
・高齢者住宅への在宅医療・在宅介護サービスの付加、医療と介護との複合サービス、医療・介護・福祉間での情報共有など、一つの拠点で複数の機能を担うような、分野や業種を超えた連携がより一層必要になっている。
【施策の方向性】
これから被災地が抱える超高齢社会の課題解決に当たっては、「居住 (住まい・住環境)」、「移動(移動手段・交通システム)」、「食(食生活)」、「社会とのつながり(就業や地域活動への包摂)」「健康長寿(自立のための生活支援や介護予防、地域医療)」の5つの側面とこれらの基盤となる「コミュニティ」から、高齢者を標準に置いた高齢者標準社会づくりを幅広く考えていくことが必要である。その際、全ての側面において、ICTの持つ力を最大限活用していくことが重要である。
*資料「“新しい東北”の創造に向けて(中間とりまとめ)(案)」
http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat7/sub-cat7-2/20130605_shiryo01.pdf
◎復興庁
http://www.reconstruction.go.jp/index.html