京都大学と長崎大学の研究チームは、複数のアルツハイマー病の患者ごとに存在する病態を明らかにし、iPS細胞を用いた先制医療への道筋を示したと発表した。
iPS細胞で患者を分類し、タイプ別に最適な薬を選ぶ治療法や早期発見につながる成果だという。
アルツハイマー病は、脳の神経細胞が死滅するなどして認知機能が低下する疾患で、脳内に蓄積するたんぱく質「アミロイドベータ(Aβ)」が発症に深く関わっていると考えられていたが、病態への関与の仕方は、ヒトの脳の細胞ではよくわかっていなかった。
研究は、若年発症の家族性のアルツハイマー病患者2名、家族歴のない高齢発症(孤発性)のアルツハイマー病患者2名からiPS細胞を作製し、病態を再現することで行われた。
その結果、以下のことがわかったという。
・アルツハイマー病患者のiPS細胞を用いることで、若年発症の患者、高齢発症の患者のどちらもアミロイドベータ(Aβ)が細胞内に蓄積するタイプがあることが明らかになった。
・細胞内に蓄積したAβは凝集物(Aβオリゴマー)となり、細胞内ストレスを引き起こしたが、Aβ産生阻害剤(BSI)もしくはDHA投与によりそのストレスは軽減した。
・これらのことから、iPS細胞技術の応用は、アルツハイマー病の病態解明や創薬研究に加えて、患者ごとの病態を事前に把握し、適切な治療介入を行う「先制医療」にも用いることができることが示された。
研究成果は、2月22日付けの米国科学誌「Cell Stem Cell」のオンライン版で公開された。
◎京都大学iPS細胞研究所
http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/index.html
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