国民生活センターでは、海外の宝くじやロトなどで高額賞金が当たったかのようなダイレクトメール(DM)を海外から送付し、消費者に申込金などを支払わせる手口が再び急増していると、注意喚起を行っている。
この手口は「賞金が当たった」「賞金当選のための資格を獲得」などという出どころの分からない賞金を受け取るために申込金などの名目でお金を支払わせるものが多い。DMを送ってくる団体の住所や連絡先ははっきりせず、抽選などがいつどこで行われるかの記述もなく、極めて詐欺的な手口が特徴だ。
このトラブルについて、国民生活センターでは昨年3月15日にも注意喚起を行い、公表後、相談件数はいったん落ち着いたものの、2012年9月に再び急増し、9月、10月の月別件数はそれぞれ1,200件、1,300件を超えた。契約者の平均年齢についても、毎年65~67歳程度で推移していたが、本年度はさらに高齢化が進み、過去最高の69歳であった。
2012 年度の相談における、契約者の属性を分析したところ、最も多い年代は70 歳代の40.2%(1,882 件)、続いて60 歳代が26.4%(1,235件)、80 歳以上が18.6%(870 件)と、70 歳以上の契約者が全体の半数以上、60 歳以上の契約者が全体の85.2%を占めており、高齢の契約者の割合が極めて高い。このため、全体の平均年齢についても、過去5 年間、毎年65~67 歳程度で推移していたところが、本年度になり、過去最高の69 歳を記録したという。
特に高齢者が被害に遭っている例が多く、相談される事例の数十倍もの被害者がいるとみられている。実際の相談事例を以下に紹介する。
【事例1】年金を担保に借金までしていたケース
別居している80 歳代の義父が、海外宝くじの封筒が届くたびに、5,000 円の手数料を払っている。今まで生活費がなくなると援助していたが、原因を問いただしたところ、海外宝くじの受取手数料だとわかった。年金を担保にして借金もしていたので、身内で返済して年金がもらえるようにした。最近もアメリカから「1 億4,000 万円が当たる」という封筒が届いていた。こうした手紙を届かなくする方法はないか。義母と二人で住んでいるが、義父の体調に問題はなく、介護保険は利用していない。(相談受付年月:2012 年10 月、契約当事者:80 歳代、男性、愛知県)
【事例2】十年間もクレジットカードで手数料を支払い続けている
父は判断能力に問題がある。最近入院することになり、海外宝くじへのエントリー料金をクレジットカードで何十年間も支払っていたことが分かった。日々大量に海外からのダイレクトメールが届く。3社のクレジットカードを使っており、1件当たりの引き落とし額は3,000円程度だが、件数が多いので毎月約10 万円になり、約10 年間続いていた。クレジットカード会社に、本人が申請せず、勝手に引き落とされているものは調査してもらっている。直近の引き落とし分として数千円程度返金されたものもあるが、父自ら申し込んでいるものもあるのでそれについては難しいようだ。何とか払ったお金を取り戻せないだろうか。「当たった」と連絡しながら当選金が届かないのだから詐欺と思う。警察は動いてくれるか。(相談受付年月:2012 年11 月、契約当事者:80 歳代、男性、大阪府)
【事例3】今後DMを送らないでほしいと手紙を送ったら前より一層届くようになった
今年の2 月、1 億円余りのお金が当選したというDMが届いた。2 回目に同じ手紙が届いた後、「自分は高齢なので当選金は辞退し、若い人に譲る」と手紙を送った。その後、前よりたくさんの同様のDMが届くようになった。海外からの手紙のようだ。不審なのでやめさせたいがどうしたら良いか。(相談受付年月:2012 年5 月、契約当事者:80 歳代、男性、大阪府)
こうした高齢者やその家族からの相談について、国民生活センターでは、以下のようにアドバイスしている。
1.決して申し込まないこと!消費者が違法性を問われる可能性も
申し込んでもいないのに「くじ」や「懸賞」に当選するということはありえない。また、実際に業者が海外で宝くじの購入や懸賞への申し込みを行っているかどうかも疑わしい。申し込んでもいないのに「当選した」などという甘い話には決して乗らないこと。また、日本国内で海外宝くじを授受すると、消費者自身も違法性を問われる可能性もあるため(「富くじ罪」に違反するという見解もあるため)、絶対に申し込まないこと。
2.クレジットカード番号や個人情報を業者に教えないこと
一度申し込んだ消費者に対して、別の業者から多数の海外宝くじや「賞金が当たった」というDMが次から次へと送付されてくるケースがある。自ら個人情報を流出することになりかねず、また、一度だけ申し込むつもりでクレジットカード番号を教えたところ、【事例2】のように、毎月「申込金」などの名目で料金を引き落とされ続けたというケースもある。さらに、海外の業者が関連するクレジットのトラブルは特に解決が難しく、被害の回復も困難である。安易にクレジットカード番号や電話番号などを業者に知らせないこと。
3.送られてきたDMは処分してもかまわない
一度申し込むと、大量にDMが送付されてくることがある。このように送付されてきたDMについて、受け取りたくないときには、「受取拒否」をすることもできる。ただし、「受取拒否」をしても次からDMが届かなくなるとは限らないので、「受取拒否」の手続きをする時間がない場合や、DMを受け取ってしまった場合については処分してもかまわない。【事例3】のように、当選金の受け取りを辞退しようと業者に連絡をとったことで、かえって大量のDMが届くようになった例もある。
同センターでは、こうした宝くじDMの詐欺にあわないためにも強い調子で「絶対に無視すること」とアドバイスしている。
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