理化学研究所は、脳や脊髄の病巣に蓄積するタンパク質の安定化が、全身の筋肉まひを起こす神経変性疾患「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の発症時期を決定する要因であることを明らかにした。
ALSは全身の進行性の筋肉まひを引き起こす神経変性疾患の一つで、わが国では約8,500人のALS患者がいると推定されており、進行すると常に医療行為を伴う看護と介護を必要とすることから、40歳から介護保険が利用できる特定疾病に指定されている。
有効な治療法は見つかっておらず、患者の苦痛に加え、長期にわたって負担の重い介護を必要とするため、原因の解明と治療法の開発が求められていた。
近年、ALSの病巣にタンパク質が異常に蓄積することや、遺伝子の変異が30種類以上あることが発見され、病態解明の手がかりを得たが、これらがどのようにして疾患の発症につながるのかについては未解明だった。
今回、研究チームが変異遺伝子を持つ遺伝性ALS患者81人の臨床情報を解析したところ、、ALSの発症年齢が早い患者ほど変異タンパク質の半減期は長くなり、安定化することを見いだした。さらに、このタンパク質を任意に安定化させることが可能な細胞モデルを作り、解析したところ、タンパク質の安定化により、ALS患者の病巣で見られるタンパク質の生化学的特徴であるタンパク質の切断や不溶化を再現し、細胞毒性を招くことが分かった。
今後、この細胞モデルを用いて、タンパク質の安定化が引き起こす運動神経変性に至る機序を解明することにより、ALSの発症メカニズムの解明や治療薬の開発が進展することが期待される。
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