第46回衆議院議員総選挙の各党の公約から、後半は公明党、共産党、社会民主党の介護政策を紹介する。
■公明党
「介護に安心を。介護サービスのさらなる整備」として、以下の3つを提示。
1. 安心のサポート体制と介護従事者の処遇改善
訪問介護・看護サービス等の大幅拡充や、ICTの活用も含め24時間365日いつでも利用可能な在宅支援サービスを強化。 また、こうしたサービス基盤を整備し、必要な介護・看護人材の確保や処遇改善を行うため、新たな基金の創設などを行う。
2. お元気ポイントの導入
介護保険を利用せずに元気に暮らしている65歳以上の高齢者に対し、介護予防などの取り組みを評価し、介護保険料を軽減する仕組みを作る。
3. 住宅セーフティネットの強化
バリアフリーの構造を持ち、医療と介護が連携して高齢者を支援するサービスを提供する「サービス付き高齢者向け住宅」の整備・拡充を進める。
*ポイント
自民党とともに政権復帰をねらう公明党。介護・看護人材の確保や処遇改善に言及しているほか、「お元気ポイント」の独自性のあるプランが目を引く。
■共産党
「社会保障切り捨てに反対し、再生・充実への抜本的転換をはかる」として、民主・自民・公明は、「密室談合で決めた『社会保障制度改革推進法』にもとづき、医療費の窓口負担増、国保料(税)の値上げ、介護保険のサービス取り上げと利用料の引き上げ、保育制度の改悪、生活保護の門前払いや強権的な打ち切りなど、あらゆる世代に激烈な“痛み”を押しつける『改革』を行っていくことを宣言している」と批判。
日本共産党は、「壊された社会保障を再生し、つづいて『先進水準の社会保障』への充実をめざす」と宣言し、
「本人も家族も安心して利用できる介護制度をつくる」ため、特別養護老人ホームを増設し、待機者をゼロにすること、低所得者の利用料を無料にし、国の制度として保険料の減免制度をつくることを提案している。
*ポイント
民主・自民・公明の社会保障制度改革を批判。所費税増税にも真っ向から反対している。政治のあり方全般へのアンチテーゼのためか、「改革ビジョン」においては、個別の政策を実行するための財政的基盤などについての説明はない。
■社民党
「介護保険・高齢者福祉の充実」の中で、①特養ホームや小規模多機能施設の増設、在宅生活の支援強化で介護施設待機者をゼロに②保険料・利用料金を見直し、だれもが利用できる制度へ改正③介護認定を簡素化④労働条件の改善と人材育成に取り組む⑤総合的な高齢者福祉政策を充実⑥介護費用の国庫負担を引き上げる⑦レスパイトケアを拡充を提言。
具体的な方策として、①5カ年計画を策定し、特別養護老人ホーム、介護保険施設、介護療養型医療施設などを、現在の倍に増やす、介護療養病床を削減・全廃する計画をストップさせる」②介護保険料の引き上げは、公費負担割合の引き上げ、各都道府県に設けられた財政安定化基金の活用で緩和する③事務手続や時間がかかる介護認定を見直し、現行の7段階から3段階程度に簡素化。ケアマネジャーなど現場の専門家の裁量を大きくするしくみを検討する。④介護施設の人員基準の改善(介護施設の配置基準を現行の3対1から2対1に見直す⑥介護保険料・介護利用料を抑制するために、国負担割合を30%に引き上げ、さらなる引き上げを検討などをあげている。
また、医療・介護にわたる問題として「医療難・介護難の解消」を取り上げ、療養病床に関する改定を是正し、“医療難民”“介護難民”を生み出している療養病床の削減計画の見直しも主張している。
*ポイント
選挙公約は全62ページの膨大なもの。高齢者・介護政策にも多くページを割いており、具体的な施策も提案している。医療、介護、福祉など個人情報を官民で連携する共通番号制度(マイナンバー)には反対の立場を取るなど、現行の重点化・効率化に反対する立場が際立つ。
【まとめ】
2大政党の社会保障制度改革に差がないためか、今回の選挙では、社会保障・介護政策は大きな争点となっていない。反対の立場を取る党も、公約においては、社会保障制度のあり方を論じる理念的なものが多く、個別の政策への提言は少ないと言える。
◎公明党・衆院選重点政策
◎日本共産党・改革ビジョン
◎社民党 衆議院選挙公約2012
■関連記事
・<12月16日投票>2012衆議院選挙、主要各党の介護政策は?(1)
・8月30日の衆院選、要介護5なら郵便投票が可能
・参院選マニフェスト 各党の社会保障・高齢者政策まとめ