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介護のストレスを減らすためにできること――老年学公開講座レポ（3）

地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター（東京都老人総合研究所）は、7月19日、第121回老年学公開講座「あきらめない介護予防」を開催した。介護予防に密接な排尿障害や膝の痛みについての講演に続き、同センター研究所福祉と生活ケア研究チーム研究員の伊東美緒氏が「どうする？介護する人のストレス」をテーマに講演した。

伊東氏の研究テーマは介護施設の認知症ケア。講演では、認知症患者の介護を中心に、介護ストレスの背景や要因を明らかにしながら、介護する人のストレスをどのように減らしていくかについて語った。
興味深かったのが、在宅で介護する場合のストレスのみならず、病院や施設に預けた場合も介護者の「心の問題」はなくならないという事実。
一例として取り上げたのが、東京都葛飾区と秋田県大館市で行われた調査「在宅介護支援効果の最大化に関わる要因の要求」（2006年）で、在宅介護から入院・入所へと移行した場合、介護者の疲労蓄積度は入所後に減少するが、満足度も低くなったという結果が得られたという。

「入院・入所することで介護する人の満足度が下がるのは、後ろめたさを感じることや、周囲の人に『施設に入れてしまったの？』と言われてしまうことなどが原因です。入院・入所したからといって介護者の心の問題が解決されるわけではないことを知ってください」

どのような形態であっても介護には負担感が伴うもの。その前提を理解した上で、介護者のストレスを軽減していくことが大切になるということだ。
伊東氏が語ったストレスを減らすための対策は以下の通り。

誰もがいつかは病気や障害を持つと心得る
年を取ること＝介護が必要になることを理解し、家族はそのためにできることをしておく。介護サービスの情報を集める、介助技術の講習会に参加するなどの具体的な対策とともに、親族や近所の人と良い関係づくりをすることも大切。「認知症の初期症状は、近所の人など第三者の方が気づきやすいものです」。

早期受診の重要性を理解する
認知症は初期の段階で受診することで、症状の進行を遅らせることができる。また、初期のうちに症状の特徴を知っておけば感情的な対応をすることが減り、認知症患者にも家族にもよい影響が。「家族が認知症の人の介護をする場合、まったくぶつからないということはないでしょう。しかし、知識を持って小さな工夫をしていくことで、ぶつかる回数を減らすことができます」。

ひとりで抱え込まない
要介護者と家の中で2人きりになると心理的に追い込まれてしまう。介護する人もされる人も家に閉じこもらないことが大切。そのためには、親族や近所の人の協力を得る、介護保険サービスを上手に活用すること。とくにデイサービスの利用は、介護者が息抜きできる貴重な時間だ。

専門職との良い関係作りにつとめる
「介護サービスの利用者が増えるとともに、介護スタッフとトラブルを起こす家族も増えていると感じます」。家族のなかには、「サービスにこれだけお金払っているんだから」と言う人もいるそう。例えば、ホームヘルパーに「ごはん、家族の分のごはんも作ってよ。どうせ手間は一緒でしょ」と言う人、施設職員に「状態があまりよくないので、時々会いに来てお話ししてあげてください」と頼まれ、「私が一緒の時はそんなことはない。あなたたちのやり方が悪いのでは」と返す人も。「介護スタッフと家族との信頼関係がないと、良いケアにつながらないことを理解してください」。

周囲の人たちが心がけること
特定の家族に負担が集中しないよう、休日は介護を申し出るなど親族間で配慮することが大切。実質的な手伝いが難しいのなら、ねぎらいや感謝の言葉をかけるだけでもいい。施設入所の話が出た時に自分は何もしないのに「家で見てあげましょうよ」と言うなど、理想を押し付けるのは厳禁。

ひとつひとつの対策は、介護に関わる人には知識としては当たり前であっても、実行がむずかしいものも。そして、介護の経験がない人にとっては、ぜひとも知っておいてほしいことばかり。最後に、会場に向けられた「今は介護と縁がなくても、家族の介護をしている人は自分とは関係がない人ではなく、『いつかは通るかもしれない道』と思ってほしい」という言葉も印象的だった。

◎東京都健康長寿医療センター

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