6月22日に開催された第91回社会保障審議会介護給付費分科会では、後半、公表されたばかりの「今後の認知症施策の方向性について」の概要に関して、委員全員が意見や要望を述べた。
認知症の人と家族の会福代表理事の勝田登志子委員は、認知症の人に対する取り組みを重要視し、今回このような方向性を示したことに感謝しながら、この流れのなかに家族会など当事者組織が果たす役割もあることを強調し、「ぜひ関わっていきたい」と名乗りを上げた。
一方で、認知症初期集中支援チームが地域包括に置かれることに対しては、「私どもの調査では地域包括の認知率は27%。昨日も地域包括の人と話しをしたが、とてもこれ以上(業務を増やすこと)はできない」と、地域包括支援センターにチームを設置することに疑問を呈した。
また、保険者代表の大西秀人委員(全国市長会介護保険対策特別委員会委員長・高松市長)は、「住み慣れた地域と一口に言っても、全国画一的ではない。(この概要図には)市町村の行うべきことの流れが書いていない」と、最も身近な窓口である保険者機能の説明がないことに疑問を述べた。
村川浩一委員(日本社会事業大学教授)は、「早期診断・早期対応の仕組みづくりは評価するが、具体的なチームをいかに作っていくかが今後の重要課題」と述べ、勝田委員同様、「現状の地域包括(最小単位3人)に支援チームを置くのは無理。3倍くらいの体制でないと。市町村保険センターを視野に入れては?」と提案した。
「今後の認知症施策の方向性について」概要
※厚生労働省該当ページよりダウンロードして参照のこと
池田省三委員(地域ケア政策ネットワーク研究主幹)は、「精神病院のこれまでの役割を厳しく書いているが、現状の基幹型認知症疾患医療センターは、ほとんどが精神病院内に併設されている」と矛盾点を指摘。
また、「認知症は身体介護ではなく、見守り型なので“介護”という言葉がなじまず、ケアという言い方をするが、その内容を“寄り添う”“やさしさ”など情緒的な言葉で表現していいのか。適切なサービスとは何かをもっと見極めるべき」と具体的な施策を要望した。
さらに、「認知症の人のアセスメントはケアマネジャーが1時間で状態・状況把握できるものではない。特養などに1ヵ月くらい入所してもらって長期にわたって状況を把握しアセスメントすべき」という意見も述べた。
そして、「介護保険ができて10年以上になるのに、認知症施策は10年の空白があるが、この取り組みが示されたことで、今年は認知症は元年といえる」と、今回の施策がいかに画期的なものであるかを強調した。
田中雅子委員(日本介護福祉士会名誉会長)は、「早期診断・早期対応は重要だが、家族・本人とも『気付きたくない・認めたくない』という心理状態に陥っている。それを変えていくことが大切」と、現実の取り組みに困難が伴うであろうことを示唆した。
斉藤訓子委員(日本看護協会常任理事)は、「人材育成も大切だが、人材確保も考えてほしい。認知症ケアを専門的に学んだナースは現在全国に200人くらいいるが、ほとんどは病院勤務。地域でのケアに必要な場合は派遣可能にするなど、少ない人材を有効に活用してほしい」と人材確保の見込みに不安を述べた。
このほかにも、「施設ケアが抜け落ちている」「認知症サポーターキャラバンなど、地域の力の有効活用を」など、多くの意見が出された。
最後に大森分科会長は、改めて部局横断でまとめられた今回の施策を称え、池田委員の言葉を借りて「今年はまさに認知症元年となる」と締めくくった。
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