6月7日に、日本認知症コミュニケーション協議会が開催したシンポジウム「東日本大震災における介護問題と地域の役割〜高齢者の生活環境と認知症ケア〜」では、厚生労働省老健局高齢者支援課 認知症・虐待防止対策推進室 認知症対策専門官の堀部健太郎氏が公演を行った。テーマは、「認知症に対する国の取り組み〜震災と今日の認知症対策〜」で、国が行っている認知症対策の枠組みについて説明するとともに、東日本大震災時にどんな動きがあったのか、報告した。
堀部氏は、冒頭、今年4月にWHOが出した報告書「DEMENTIA(認知症) -A PUBLIC HEALTH PRIORITY-」のポイントを紹介。
・認知症患者が増加している
・低中所得国において、爆発的に増加
・認知症は正常な老化の一環ではない
・世界で4秒に1人、新しく認知症になっている
一方、国内に目を向けると、「認知症高齢者のうち、日常生活自立度II以上」の人は、2010年現在で208万人。今後は、「高齢者数がプラトー(横ばい)になっても、認知症者数は増える」と堀部氏は言う。なぜなら、65歳以上の高齢者のなかでも、75歳以上といったより高齢の人の割合が増えるからだ。
そこで2008年、「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」として、下記のようなことを公表。
このうち、医療対策については、認知症治療の基幹病院として、「認知症疾患医療センター」を全国に整備するとともに、地域の医療体制構築の中核的な役割を担う「認知症サポート医」の養成と、かかりつけ医の認知症対応力を向上する研修事業を実施。現在、全国で150病院以上が認知症疾患医療センターに指定されているという。
講演の後半は、東日本大震災時のことを振り返り、厚労省側ではどのように被災地の情報を集めたのか、いかに混乱していたのかということを、当時の実際の資料も交えながら説明した。
高齢者施設の担当である堀部氏は、各施設が被災しているのかという情報もままならないなか、航空写真を入手し、震災前の画像と比較しながら、「この建物がなくなっている」など、一軒一軒確認を行ったりもしたという。
また、岩手県では、被害は大きかったにもかかわらず、「グループホームで亡くなった人はいなかった」。その理由として、「高台にあるものが多かった」ことと、「しっかり避難訓練をしていて、避難していたから」と説明した。
――シンポジウム(3)へ続く。
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