シニアに特化したマーケティングリサーチを行う株式会社ジー・エフは、「シニア・高齢者の介護」についての意識調査を実施し、このほど運営するサイト「シニアマーケティングcom」にて調査結果を公開した。
今回の調査では、有効回答件数813件のうち、介護の経験があるのは約6割だった。回答者は、男女比がほぼ半々、年代は50代から80代以上と幅広く、性別・年代別で介護経験の有無や介護観、自分自身の介護環境の希望などでの違いが明らかになった。また、介護経験の有無や介護体験の「つらさ」が介護についての意識に大きく影響するなど、興味深い結果を得ている。
【調査の概要】
●調査対象:全国に在住するGFシニアデータベース
●調査方法:電話調査
●調査時期:2011年8月4日 18:30〜20:00
●有効回答件数:813件
●男女比:男性 50.9% (414人)、女性 49.1%(399人)
●年代:50代 26.4%、60代 34.4%、 70代 27.9%、 80代以上 11.2%
●家族との同居状況:
配偶者と同居している55.1%、 していない22.6%、 配偶者はいない22.3%、子どもと同居している35.1%、 していない49.1%、 子どもはいない15.9%
親と同居している20.8%、 していない31.4%、 親はいない47.8%
主な調査結果の内容は、以下の通り。
家族や親族の介護経験についての質問では、「現在している」が18.5%、「現在していないが、過去にしていた」が38.5%。その2つを合わせた「介護経験者」は57.0%と6割近くで、女性が64.9%と男性の49.3%より15.6ポイント高い。
「現在介護をしている」人を年代・性別で見ると、全世代で最も高いのは50代の20.5%で、50代女性では25.0%。「現在している」は、女性では年代が上がるにつれ減少傾向にあるが、男性では60代を境に微増傾向にある。
「介護経験者」が最も高いのは60代で、計60.7%。中でも女性60代は69.0%と最も高い数値を示した。男性60代は52.1%で男性の中では最も高いが、「介護経験者」は、いずれの年代においても、男性に比べて女性が10ポイント以上も高かった。
親との同居状況「同居している」「同居していない」「親はいない」の3タイプ別に介護経験をたずねたところ、「現在介している」人は「同居している」が37.3%で最も高い。また、「介護経験者」においても、「同居している」が63.9%で、同居している人の介護経験率が高いことが明らかになった。
■男性は自分の親、女性は双方の親の介護をしている
家族や親族の介護経験がある回答者にのみ、被介護者の続柄についてたずねたところ、「自分の親」が74.1%で最も高い数値を示した。次いで「配偶者の親」50.1%、「配偶者」32.8%と続く。男女別に、被介護者の続柄をみると、「自分の親」が女性72.2%、男性76.5%と男女ともに最も高く、男性の方が女性よりもポイントが高いことが注目される。反対に、「配偶者の親」では、男性32.8%に比べ、女性63.7%と30.9ポイントも高く、男女間で大きな差が見られた。
「自分の親」を選択したのは、50代が80.7%、60代が81.2%で他の年代に比べて高く、70代以下では「自分の親」が最も高かったが、80代以上では、「配偶者」が63.5%で最も高い結果となった。
■介護のつらさは、何をおいても精神的なつらさ
家族や親族の介護経験がある回答者に、「介護をしていて、つらいと感じたことがあるか」をたずねたところ、「つらいと感じたことがある」が68.0%と7割近くにのぼった。年代別では、50代が75.6%で最も高く、60代70.0%、70代63.1%、80代以上55.8%と年代が上がるにつれて低くなっている。「つらいと感じことがある」を介護状況別に見てみると、「現在はしていないが、過去にしていた」が61.7%であるのに対し、「現在している」人は81.%で、19.6ポイントの差が。介護のただ中は、つらいことが多いことがわかった。
「介護がつらいと感じた経験がある」と答えた人につらいと感じた事柄についてたずねたところ(複数回答)、「精神的な面」が87.0%と最も高く、次いで「肉体的な面」71.4%、「環境の変化」70.2%。「精神的な面」は、50代が90.0%、現在介護をしている人が94.3%と、全体よりも高い数値を出している。
男女別では、ともに「精神的な面」が最も高いが、2番目に高いのは、女性は「肉体的な面」75.6%、男性は「環境の変化」68.1%と違いが見られた。反対に、男性が女性を上回る項目は「金銭的な面」(女性41.7%、男57.0%)だった。
過去に家族や親族の介護をしていた回答者に、介護を終えての変化についてたずねたところ、「家族と過ごす時間が増えた」が70.3%で最も高かった。次いで、「友人と過ごす時間が増えた」64.9%、「泊りがけの旅行に行くようになった」52.7%となっている。介護を終え、家族や友人と過ごす時間が増えた回答者が多いということは、介護をしている間は、こうした機会が少なかったことが推察できる。
男女別に、介護終了後の変化をみると、「仕事を始めた」は女性34.3%、男性46.7%。「友人と過ごす時間が増えた」は、男性54.1%、女性73.0%で、男女間で差が見受けられた。 また、「泊まりがけの旅行に行くようになった」、「家族と過ごす時間が増えた」の項目でも、女性は男性よりも10ポイント程度高かった。
「介護がつらいと感じたことがある」、「感じたことがない」別に、介護終了後の変化について見てみると、「いずれも当てはまらない」を除くすべての項目で、つらいと感じたことがある回答者の回答割合が高い。特に、「泊まりがけの旅行に行くようになった」の項目では、「つらいと感じたことがない」人が46.7%に比べ、「つらいと感じたことがある」人は56.5%とが9.8ポイント高かった。
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