■介護経験のある女性は、被介護者になることへの不安が特に大きい
「自身が介護される側になることに不安を感じることがあるか」を質問したところ、「不安を感じることがある」と答えた人が77.1%と、8割近くもいた。男女別では「不安を感じることがある」は男性70.5%、女性84.0%で、 男性に比べて女性は自身が介護される側になることへの不安が大きい。性・年代別では、女性60代が88.7%、女性80代以上88.4%で、ともに9割近くとなり、他の層に比べて高い数値を示した。全体を通じて最も低かったのは、男性70代62.8%だった。
家族や親族の介護経験別に、被介護者になることへの不安をみると、「不安を感じることがある」の項目では、「現在している」人が86.0%と最も高く、次いで、「現在はしていないが、過去にしていた」人が81.5%となった。一方「経験はない」人では69.4%で、経験者に比べて10ポイント以上低く、介護経験者ほど、自身が介護される側になることに不安を感じていることが明らかになった。
介護の際につらいと感じた経験別では、「不安に感じたことがある」を選択したのは、「つらいと感じたことはない」人が69.6%だったのに対し、「つらいと感じたことがある」人は89.2%で、19.6ポイントの差があった。介護の際につらいと感じた経験がある人ほど、介護される側になることへの不安が大きいことがわかる。
■介護中につらいと感じた事柄は、介護される側になった場合の不安に
介護される側になることに不安を感じることがある回答者にのみ、不安なことをたずねたところ、「家族への負担」が94.7%で最も高い。次いで、「金銭的な負担」79.7%、「家族との人間関係の悪化」61.9%、「頼れる人がいない」50.1%だった。
「家族への負担」の項目では、女性60代が100.0%で最も高い数値を示した。 「金銭的な面」は、男女ともに年代が上がるにつれて減少する。「家族との人間関係の悪化」の項目では、男性50代が74.4%、女性50代が72.6%で、全体と比べてやや高い。反対に、男性70代が47.9%で唯一半数を下回り、最も低い結果となった。「頼れる人がいない」の項目では、男性80代以上が64.7%、男性60代が62.4%と高かった。
家族との同居状況別に、介護される際に不安な事柄をみると、「家族への負担」、「金銭的な負担」、「家族との人間関係の悪化」を選択したのは、配偶者や子どもと同居している回答者が、同居していない回答者、配偶者や子どもがいない回答者よりも多い。また、「頼れる人がいない」の項目では、「配偶者はいない」回答者で62.7%、「子どもはいない」回答者では72.7%と高い数値だった。
介護がつらいと感じた経験別に、介護される際に不安な事柄をみてみると、「家族との人間関係の悪化」の項目では、「つらいと感じたことがない」49.5%に比べ、「つらいと感じたことがある」69.8%が20.3ポイント高く、不安感に違いがある様子がうかがえる。 また、「頼れる人がいない」の項目においても、「つらいと感じたことがない」43.7%に比べ、「つらいと感じたことがある」57.3%と10ポイント以上も高かった。
介護の際つらいと感じた事柄で、「介護していた方との人間関係の悪化」を選択した人は、自分自身が介護される際に不安な事柄として、「家族への負担」をあげる率が高い。また、「金銭的な負担」を介護のつらさとして選択した人は、「金銭的な面」での不安を多くあげており、これらのことから、自分が介護をしていた時につらいと感じた事柄は、自身が介護される側になった場合にも不安に感じる傾向にあることがわかった。
自身が介護される側になった際、介護を依頼したい人や場所についてたずねたところ、「施設や病院」が75.9%で、7割半ばと最も高い数値を示した。次いで、「配偶者」49.0%、「子供や子供の配偶者」25.8%となっている。
男女別に、自身の介護の依頼先をみると、「配偶者」の項目では、女性の38.8%に比べ、男性は58.7%で19.9ポイント高く、男女で意識の差があることがわかった。また、 「施設や病院」の項目では、男性71.3%に比べ、女性は80.7%で9.4ポイント高かった。
介護経験別に、自身の介護の依頼先をみると、「配偶者」、「子供や子供の配偶者」および「その他の家族や親族」の項目では、いずれも介護経験はない回答者が、最も高い数値を示した。「施設や病院」の項目では、「現在はしていないが、過去に介護していた」が80.2%、「現在介護している」79.3%でどちらも8割前後。一方、「経験はない」は70.6%で、他の層に比べて低い。
介護がつらいと感じた経験別に、自身の介護の依頼先をみると、「子供や子供の配偶者」、「その他の家族や親族」の項目では、つらいと感じたことがある回答者に比べ、つらいと感じたことがない回答者が10ポイント程度高い数値を示した。反対に、「施設や病院」の項目では、つらいと感じたことはない回答者より、つらいと感じたことがある回答者が9.3ポイント高い。
これらの結果から、介護経験の有無や、介護中につらさを感じたかどうかが、自身の介護を依頼したい先に影響していることがわかった。
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