日本福祉大学の近藤克則教授を主任研究者とした、厚生労働省の研究班は、高齢者の歯の状態と認知症の関係についての調査結果を発表した。
この調査は愛知県に住む65歳以上の高齢者4,425人を対象に4年にわたって追跡し、その期間、新たに認知症を発症して要介護認定を受けた220人を割り出し、分析した。その結果、年齢の違いや持病の影響を考慮しつつ、認知症になるリスクを計算した数値は、自分の歯が20本以上ある人に比べ、歯がほとんどなく入れ歯も使っていない人で1.9倍にのぼった。同様に、あまり噛めない人のリスクは、何でも噛める人の1.5倍、かかりつけ歯科医院のない人は、ある人の1.4倍だった。
これまでは歯の状態と認知症の関係はわかっていなかった。しかし、今回の結果から研究班は、「歯を失うことや噛めなくなることで、認知症発症のリスクが高まることが示された。また、歯を失う原因となる歯周病などの炎症が直接脳に影響することや、噛めなくなって咀嚼機能が落ちることで、脳の認知機能の低下を招く可能性があると考えられる」としている。
認知症予防の観点からも、高齢になったら、定期的に歯科で口の中のチェックを受け、噛む力を保つために入れ歯を入れておくように心がけることが大切だと言えそうだ。