いつまでも元気でいてもらうために高齢者の暮らしで気をつけたいこと

プロも驚く!福祉用具の専門家のスゴ技

杖や手すりといった福祉用具は、高齢者の日々の生活を直接支える大切なツールです。その専門家は、安全・安心を維持するため日々、知恵を絞り、工夫を凝らし続けています。このシリーズでは、同じ介護業界で働くプロ(ケアマネジャー)が、福祉用具の専門家の、ちょっとすごい取り組みや工夫を取材・紹介します!

取材した介護のプロ(ケアマネジャー)
高木はるみさん(京都市内の事業所勤務 主任ケアマネジャー)
スゴ技を発揮した専門家(福祉用具専門相談員)
髙石和子さん(ダスキン ヘルスレント京都中京ステーション 店長)

高齢者の尊厳を支える「数センチ単位の繊細な配慮と素早い反応」

排泄に失敗したことを自責し続ける女性と、支援に疲れてしまった娘…

高木:京都中京ステーションの皆さんといえば、介護用の特別なベッドを用意していただいた、90歳代のAさんのお宅での仕事ぶりが思い起こされます。

髙石:ああ、古い日本家屋にお住まいの方ですね。屋敷が広く、とても長い廊下もありました。

高木:その廊下の長さが問題だった。部屋からトイレまでが5メートルほどあったでしょうか。Aさんは、老衰で少しずつ身体の機能が落ちてきていましたが、用を足しに向かっている途中、床や服を汚してしまうことも起こるようになってきたのです。特に、ベッドから起き上がらなければならない朝と夜には、問題が起こりやすかったのです。

髙石:近所にお住まいの娘さんも悩まれていましたよね。

高木:そうなんです。娘さんは一日一回、Aさんの様子を確認に行かれているのですが、Aさんが排泄に失敗した時は、本当に困られていました。その後処理に困っていたわけではありません。排泄の失敗に悩み、自分を責め、「ほんと、情けない母親だねぇ。ごめんね、ごめんなさいねえ」と泣きながら、何日も落ち込み続けるAさんに、疲れ果てていた感じでした。

最上の配置ポイントで、生活の質と身体の状態を維持

髙石:高木さんから、支援の依頼をいただいた際、まず、やったことはベッドの位置を廊下のできるだけ近くに変更すること。その上で、ベッドからの立ち上げりや移動を助ける用具を設置しました。さらに、それでもトイレが間に合わない場合も増えてきたので、ベッドの近くにポータブルトイレを設置しました。

高木:髙石さんは、さらりと「用具を設置して、ポータブルトイレを置いた」と仰いましたが、使う方の身体の状況をよく把握し、数センチ単位の繊細な配慮とともに行われていましたよね。

髙石:ありがとうございます。補助のための用具については、ベッドから立ち上がり、廊下に出やすいよう、わずかに角度をつけることを心がけました。また、ポータブルトイレの配置では、ベッドとの「高さ」と「距離」の調整に気を配りました。

ベッドとポータブルトイレの「高さ」が違うと、身体の機能が衰えた高齢者にとって、結構な障壁となります。使う方の身体の状況に合わせた位置を設定することが重要です。

高木:もう一つ、使う人がベッドから立ち上がりやすい「高さ」を実現する必要もありますよね。京都ステーションのスタッフの皆さんは、先にも述べた繊細な配慮と工夫で、そうした複数の課題をうまく解決できる、最上の配置ポイントを見出してくれました。おかげで、Aさんは、ポータブルトイレを設置してからは、排泄を失敗することもなく、日々の生活を送ることができています。

「午前発注・午後納入が当たり前」という迅速対応を支えるのは…

高木:繊細な配慮が魅力的な京都ステーションの皆さんですけど、もう一つ、素晴らしい点があります。それは、対応が「早い」こと。特殊な介護用のベッドだって、午前中に発注したら午後に納入、といった迅速な対応をごく普通に実現してくれます。

髙石:ありがとうございます。とはいえ、迅速に対応できているのは、高木さんの発注が的確だからでもあります。

高木:そういっていただけるとうれしいですね。私自身、福祉用具事業所さんに発注する際には、ケアマネジャーとしての経験・知識と、別に取得した福祉用具専門相談員の知識や住環境コーディネーターの知識も活用し、担当する高齢者のことはもちろん、家の状況とかご家族様の状況など過不足なく把握した上で、その情報の中から、福祉用具専門相談員の皆さんに必要な情報を選び、お伝えしています。そう、できるだけ簡潔に、要らんことは言わんようにして(笑)。そんな私の説明だけで、あれだけ的確に対応される点には、いつも驚かされます。何か工夫されていることはあるのでは?

髙石:そうですね。まず心がけているのは、担当する高齢者にとって、安全な用具を選ぶことでしょう。それから、どうしてもはっきりしないことは、無理に想像で補おうとせず、使えそうな用具を複数、現場にもっていくことで、対応しています。

高木:なるほど!でも、それでも、現場を見るまでは「適切なものを持っていけているかどうか…」と不安になることはありませんか。

髙石:それは、不安ですよ。現場に行くまでは不安です。行ってみないと分からないことはあるわけですから。

高木:不安を解消するために工夫していることはありますか。

髙石:考えうる用具はできるだけ車に積んでいくことですかね。使わないかもしれませんが、とにかく、持って行けるだけもって行きます。

高木:そうした配慮は、ありがたい限りです。ほんとうに髙石さんは、配慮の人。関係するあらゆる人が何を考え、何を欲しているのか、いつも考え、素早く反応し、気を配ってくれる。私に対しても同じです。私が何を考え、どうしようとしているのか、先回りして考えてくれているとしか思えない速さで対応し、配慮してくれるんです。

髙石:いや、そこまで褒められると照れますね(笑)。まあ、高木さんの対応をよく拝見し、参考にしているのは、事実ですけどね。

高木:それはまた、なぜ?

髙石:高木さんが、担当する高齢者やそのご家族のことを深く理解し、適切な提案をされているからです。ちょっとした雑談の時ですら、高齢者や、そのご家族様のことを考えつくして 発言し、提案なさっている。本当に学ぶところが多いのですよ。

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