杖や手すりといった福祉用具は、高齢者の日々の生活を直接支える大切なツールです。その専門家は、安全・安心を維持するため日々、知恵を絞り、工夫を凝らし続けています。このシリーズでは、同じ介護業界で働くプロ(ケアマネジャー)が、福祉用具の専門家の、ちょっとすごい取り組みや工夫を取材・紹介します!
- 取材した介護のプロ(ケアマネジャー)
- 山浦正哲さん(あいずケアプランセンター所長、主任ケアマネジャー)
- スゴ技を発揮した専門家(福祉用具専門相談員)
- 眞﨑俊光さん(ダスキン ヘルスレント佐世保ステーション店長)
「即日が基本」-超スピードを実現する細心の備え
ターミナル期や緩和ケアに不可欠!高機能の介護ベッド
山浦:私が所属する事業所では、最期の時を自宅で迎えるため退院する方を多く担当させていただいています。
眞﨑:がん末期で緩和ケアを受けられている方も多くいらっしゃいますよね。
山浦:そう。「がんの痛みに苦しみながらも、残された時間を家族とともに過ごしたい」と、強く願う方々です。そうした方々の思いに応えるためには、どうしても、福祉用具貸与の事業者さんに無理なお願いをせざるを得ないのです。
眞﨑:コロナ禍の影響もあり、急な対応が求められる事例が増えているともお聞きしました。
山浦:面会を制限せざるを得なかった病院関係者には、家族とともに過ごす最期の時間を少しでも確保し支援していきたいという思いがあるようです。
いずれにせよ、緩和ケアを受ける方やターミナル期の方が自宅で生活するには、介護ベッドなどの福祉用具が不可欠です。そして「明日から自宅で」という連絡に対応するとなると、連絡があったその日には、ベッドを自宅に整えてもらわなければならない。その日どころか数時間後にはベッドを納入してもらわなければならない場合もあります。
眞﨑:がん末期で疼痛を含めさまざまな症状に悩まされているような方には、背上げ機能や足上げ機能があり、高さも調整できる高機能の介護ベッドの活用が有効です。「とりあえず、家具販売店で売っているベッドを使い、後で、適切なベッドに交換する」というやり方もありますが、わずかな移動などでも激痛をこらえなければならないがん末期の方の現実を思うと、ベッドそのものの交換はできる限りご負担の少ない方法で行いたいところです。
在庫管理の徹底で、超スピード対応を実現!
山浦:そうした現実を思えば、ターミナル期の方が自宅で生活するには、在宅に戻ったそのタイミングから、福祉用具専門相談員が選ぶ高機能の介護ベッドが必要なのです。こうした状況でも、しっかり対応し続けてくれるのは、眞﨑さんをはじめとした佐世保ステーションです。後学のために、急な要望に対応し続けるための工夫をお聞かせ願えますか。
眞﨑:まず、ターミナル期の方については、介護保険サービスを使うことを想定した仮の計画を立てて、即日納品を実現するよう心がけています。
山浦:そうですね。この点は本当に助かっています。ただ、こちらが発注して数時間後にはベッドが納入されていることが、しばしばあります。この超スピードは、さきほどの工夫だけでは実現できないと思うのですが。
先を見据えた在庫管理の徹底で、急な発注に備える
眞﨑:ほかの工夫としては、即日対応を強く意識し、在庫管理を徹底することですかね。
山浦:その工夫があるから、あの超スピードを実現できているわけですか。ただ、ベッド以外の福祉用具でも、お願いするとたいていは即日で対応してくれますよね。それも在庫管理の徹底で対応していただいているのですか。
眞﨑:そうですね。在庫管理の徹底だけでなく、近い将来、どんな用具が必要になるかについて、できるだけ予測するようにしてはいます。予測する上で、ターミナル期の方を担当する医療・介護関係者の連絡用のグループラインでのやり取りなどは参考にしています。
山浦:なるほど!そうした細心の備えがあるからこそ、急な依頼にも安定した対応を実現されているわけですね。
とにかく、ターミナル期の方や緩和ケアに取り組む方を受け持つケアマネジャーとしては、眞﨑さんをはじめとした皆様の「即日が基本」という姿勢が本当にありがたい。ターミナル期の方の支援に慣れていない事業者だと、即対応ができないこともあります。時間がない中での対応ですのでご本人、ご家族、対応中の事業所と相談の上、やむなくダスキンヘルスレントさんに依頼し直したことも何度かありました。
マット交換は、他のサービスの利用時間などを活用
山浦:介護ベッドを使う方の容体が悪化すれば、その状態にあわせてベッドに敷くマットも変えていかなければなりません。時には連日のようにマットの交換をお願いすることもあります。ただ、がん末期特有の激痛に悩まされている方にとって、交換はひどく重荷になることがあります。
眞﨑:そうですね。ターミナル期の方や緩和ケアに取り組む方と向き合う際、その重荷をできる限り軽くする工夫と配慮は、忘れてはならないと思います。
山浦:具体的に、どのような対応をなさっているのですか。
眞﨑:ベッドを離れているタイミングを見計らい、交換するようにしています。具体的には、訪問入浴が入っている時などですね。車いすで散歩されている時などを「活用」させていただくこともあります。
山浦:なるほど。思い返してみれば、介護ベッドを使う人も気づかないうちに、うまく交換されていますよね。ただ、そうするとマットの交換が必要な場合は、他のサービスが入った時などに合わせてスケジュールを組み替えなければなりません。結構、大変かと思いますが。
眞﨑:こればかりはうまく工夫することはできません。ターミナル期の方や緩和ケアに取り組む方をできる限り優先し、丁寧にスケジュールを調整するだけです。
緩和ケア終了後、カンファに参加することも
山浦:いずれにせよ、ターミナル期の方や緩和ケアに取り組む方を担当すると、その分、関係者同士の絆は深まりますよね。
眞﨑:おっしゃる通りですね。特に、担当した方が旅立たれてから行う反省のためのカンファレンスに出席すると、絆はより深くなる気がします。
山浦:担当の医師が呼びかけて実施するカンファレンスですけど、医師だけでなく、看護師も薬剤師も私たちも、真剣に検討し、意見をぶつけ合っていますからね。参加した人の心の距離は自然と縮まるでしょう。
眞﨑:時には私も山浦さんと一緒に、より適切な用具の活用を提案させていただくこともあります。それにしても、このカンファレンスに参加するたび、皆さんの熱意と志には圧倒されます。
山浦:確かに。医師だけでなく、看護師も薬剤師も、みんな本当に熱か人ばっかり。まあ、その分、大変なこともあったりはするけどね(笑)。
ご近所のおススメ【佐世保編】地元民が選ぶ「おススメ」をご紹介!
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ハウステンボス - 佐世保が誇るテーマパーク。オランダの街並みを再現しており、単体のテーマパークとしては日本一の広さを誇ります。子ども向けアトラクションも整備されているため、家族連れでも一日中楽しめます。
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佐世保独楽 - ベーゴマのように、長く回すことを競いあう佐世保特有のコマ。別名は「喧嘩ゴマ」。コマをぶつけ合い、どちらかが割れるまで勝負を争うこともあったとか。今は土産物や正月の縁起物として扱われています。
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